公園で缶コーヒーを飲みながら一休みしていたら、大きな木でアブラゼミが鳴き始めたので、どこで鳴いているのだろうと木の下でセミを探していた。そうすると馴染みのノラネコが2匹、日陰の昼寝からよろよろと起き出して、ぼくの隣で同じように木を眺めている。ネコを見ると、ネコもぼくを見て「けけけけ」と鳴く。本当は「けけけけけ」じゃないと思うけど、とにかくそんな声で短い会話を交わして、またぼうっとセミが鳴く木を眺めていた。その翌朝、仕事場に来てみると入り口にセミの亡骸が2体置かれていた。コレはどう考えてもネコからの贈り物だ。これはどうしたものかと思っていたら、向いの駐車場のクルマの上に昨日のネコが寝そべっていて、「にゃー」と鳴いてこちらの様子を窺っていた。これは受け取らないわけにはいかないような気がして、しゃがんでセミを拾い、部屋のテーブルに置いた。そんなぼくの行動を見届けたかどうかは分からないけど、次にクルマの屋根のネコを見た時にはもう丸くなって眠っていた。ネコも気を遣うんだ。



最近、素麺ばかり食べてる。たまには高い素麺でも食べてみようと思い、スーパーでいちばん高いやつを買ってみた。高いと言っても500円くらいだ。さっそく茹でて食べてみたけど普段食べてるのとあまり代り映えしない気がした。でも安い素麺は確かにあまりおいしくない。ぼくの舌はその程度のことなら分かるんだな。ここのところ家で食事することが多い。昨日は豆乳の湯豆腐を食べた。ネギと豆腐しか入れない。豆乳湯豆腐の時は一緒に長ネギを2本も食べてしまう。豆腐とネギを山椒と一味唐辛子を混ぜた塩で食べる。山椒と豆腐はとても合う。大豆の風味とネギもとてもよく合う。ダシ昆布までウマい。とにかくおいしい。前に大平農園で畑の長ネギをそのままポキッと折って、少しだけ塩を付けてまるかじりしながらモエのシャンパーニュを飲んだことがあった。これは最高においしい。穫れたてのネギはすごく甘い。それに冷えたシャンパーニュがよく合うのだ。なんて贅沢。大平農園は完全無農薬なので、畑のモノをそのまま食べても平気なのでした。こんな酔狂なことはもうできないと思う。

しかしこの暑い夏に湯豆腐とはどういう風情だと思われるかも知れないが、鍋は簡単だし、一人暮らしの鍋に季節は関係ないね。その前の日はキャベツ1/4とジャガイモ、ソーセージ、ニンニク一片をチキンブイヨンでコトコト炊いて食べた。これも何だか鍋料理っぽい。ソーセージは小さいのを2本しか入れてないけど、たまに肉っぽいものを食べるとウマいなあとしみじみ思う。それで今日は夏らしくがっつり肉でも食べようかと思い、中野坂上の「てっぺい」というステーキハウスに行った。ステーキハウスと言っても客席はゴールデン街の飲み屋ほどの広さで、あとはオープンキッチンになっている。ぼくは一人でカウンター席に座って、ハラミ肉をバターとニンニクで鉄板の上で焼くアメリカンステーキ200gをゴマだれで注文する。最小グラムだけどこれでも十分がっつりサイズだ。いちばん安いメニューなんだけどこれがおいしい。ハラミは牛肉の輸入が禁止されていた頃も、内臓の扱で日本に輸入されていた。安いステーキ屋はこの輸入ハラミか、ハラミを薄くスライスしたものを貼り合わせてステーキ形に成形した加工品を使っていたそうだ。ハラミ肉には独特の味がある。「てっぺい」でアメリカンステーキを食べると、初めて食べたステーキの味を思い出したりする。「てっぺい」は貴乃花がよく来ていたことでも有名で、今でもよく表に待ち列ができている。中野坂上の人気店だ。