風邪なのに仕事。朝、カロナールという解熱剤を飲んで少し気分が良くなる。

今日は取材で久しぶりに矢田部英正さんの家にお邪魔した。
矢田部さんのお話はホントに面白い。実体験と実践に基づいているからだろう。住まいは遠藤新が設計した昭和初期の小振りな洋館だ。あちらこちらに痛みがあるのは否めないけど、古い家を愛おしむように暮らす矢田部さんのご家族の生活は、便利な豪華マンションで暮らす人よりも羨ましく思える。古い家を維持していくのは大変だと思うが、他の人には味わえない喜びや楽しみのたくさんあるのではないだろうか。帰りに矢田部さんの庭でとれた柿とブドウをいただく。残念ながら今は体調が悪くて食べられないけど、明日の夕方頃には元気になって、おいしく食べられるようになっているだろう。ぼくは世の中はあまり便利になりすぎないでほしいと思っている。便利グッズはもういらない。少し面倒なくらいが人間にはちょうど良いのではないだろうか。

齋藤孝氏の教育メソッドも元を辿れば矢田部さんの研究に行き着くそうだ。矢田部さんの研究は単なる身体論だけではなく、認知科学や生活科学、東洋思想、哲学、さらには建築やデザイン、美術にまで広がりを見せる。茶人でもある。音楽家が素人には聴き分けられないわずかな音の違いに気づくように、矢田部さんは、ぼくたちが気づかない、人の立ち振る舞いの中の雑音を聴き分けるのだと思う。