「全日本学生建築コンソーシアム」という組織があるらしい。リビングデザインセンターOZONEから届いたプレスレリースの中に、全日本学生建築コンソーシアム2009住宅設計コンペ展の案内があって、それでこのコンペのことを知った。巷では100年住宅とか200年住宅とか言われていて、建築家にはそれを実現するための提案が求められている中、未来の建築家を目指そうという学生に「50年住宅」とは噴飯ものだ。身内が勝手にハードル下げてどうするんだよ。甘やかし過ぎだろ。500年住宅くらい提案させろ、とぼくは思う。いやホントにありえないよ。現役の建築家自身の甘えの投影なんじゃないかと思った。回りくどい言い訳みたいなものだ。誰がこのテーマを考えたのか知りたいね。ちなみに審査員は吉田研介、山下保博、早草睦恵の3氏の建築家だ。この人たちが決めたテーマなのだろうか。

一応、プレスレリースにはこんなことが書かれている。

(前略)昨今唱えられている100年、200年住宅は、設計者本人が実際に100年後の姿を見ることができません。そこで、実際に検証できる「50年」と設定しました。現実的に表現できるテーマこそ、これからの住宅に必要です。今評価され、50年度も評価されるなら、その後の未来も同様です。

「50年度も評価されるなら、その後の未来も同様です」という楽観の根拠は何だろう。ホントに同様なのかな。100年後の姿を見ることができないからこそ、建築家は現時点であっても、未来のその先で仕事をしなければいけないのだと思う。建築家は現在ではなくて未来をつくっているのだから。もちろん卑近な問題は山積みで、それも解決しなければならないのだが、そんなことはどの仕事でも同じで、その建築ができて寿命を全うするまでの時間と空間を、人々のためにつくり出す仕事であることを、建築を学ぶ者も自覚してほしいと思う。逆にリアルな問題に直面しなくてもいい学生だからこそ、実現不可能であっても、先の先を見据えた理想の住宅の提案をさせるべきだ。自分の中に理想の住宅があれば、社会での実際の仕事の距離感と達成感を常に実感することができ、反省し、時には自賛しながら前進できる。そう考えると、一部の建築家は大きな目標や理想を見失っているのではないかと思う。