ドキュメンタリストの瀬戸山玄さんに教えていただいた、中国の伝統的な山東料理を出す料理店「済南(チーナン)賓館」に行く。山東料理(魯菜)は現在の北京料理のルーツ(北京料理は魯菜の一部)。魯菜は中国最古の料理書「斉民要術」にも記されているそうだ。しかし文化大革命の際、中国伝統料理のレシピのほとんどは捨てられてしまった。だから現在の中国料理の多くは、文化大革命以前とは別の料理と言っていいだろう。「済南賓館」を経営する佐藤夫妻は、戦前に生まれ、第二次大戦後の1948年に日本に引き上げるまで、中国山東省の済南で暮らしていた。その当時、佐藤孟江さんは伝統的な山東料理を済南の名店で学んだ。帰国後、文化大革命が起き、中国で伝統山東料理を受け継ぐ者はいなくなり、日本に戻った佐藤さんが数少ない正統魯菜の継承者となる。近年は逆に中国政府から招聘され、中国の料理人を指導する立場となった。中国政府認定特級厨師、山東省認定「正宗魯菜伝人」でもある。

「済南賓館」は、火曜日から金曜日までの営業(祝日は閉店)で、営業時間も午後6時〜9時までの3時間。完全予約制のお店だ。テーブルに着くと、干豆腐、ピータン入り卵焼き、キュウリの漬け物、ブタのタンと耳、鳥挽肉に蝦の子を合わせたモノなどが前菜に出て、その後は、湯葉の巻揚げ(椎茸、海老、鮑入り)、回教徒料理の里芋のミルク煮、もやしと鮭の炒め物、クコの実が入った蟹豆腐、豚肉の揚げ煮、海老チリ、小龍包みたいな水餃子、中国北部のお新香の混ぜゴハン。最後にナタデココとアンズの小皿が出て終了。