ぼくがいちばん好きなクルマは、今でもBMW2002だ。1965年に発売されたマツダファミリア1000クーペには、BMW2002の面影があってコレも好きだった。ちなみにBMWの02シリーズが発表されたのは1966年だから、ファミリアがBMW02の真似をした訳ではない。3代目カペラもどことなくBMWの雰囲気があった。

ずいぶん前になるけど、去年の春に「森アーツセンターギャラリー」で開催された、BMWの展覧会に合わせて、エスクァイア日本版に書いた原稿です。写真はこのサイトからダウンロードしました。問題があれば削除します。

「透明なスピード|BMWアートカー展」史上最速の現代美術

1886年、ドイツで世界初の自動車が発明されて約120。その歴史は自由拡大と解放に邁進した近代史にも重なる。自動車というプロダクツは単なる二点間の距離の克服という目的を超え、激動の20世紀を写す鏡として、時には過激に進化し、洗練され、夢の工業製品のフロントローにあり続けた。今や自動車は、富や知の象徴であり、ハイテクのシンボルであり、それを運転する者の自我が宿る身体の延長でもある。“ドライブ”も今では、単に“運転”を意味する単語ではない。

   

美術の概念もまた、20世紀に大きく変化したものの一つである。この時代、美術作家の一部はアトリエを離れ、都市をキャンバスに、眼差しをナイフに挑戦的な作品を制作するようになる。身近なプロダクツも作品のモチーフとなった。こうしたムーブメントの交点に、魅力的な工業製品である自動車が登場するのは時間(と費用)の問題だったと言えるだろう。最初のBMWアートカーが制作されたのは75年。オークショネアでレーサーでもあったエルヴェ・ポーランが、初参戦するル・マン24時間のため、BMW3.0CSLのカラーリングをアレクサンダー・カルダーに依頼したのがBMWアートカーの原点だ。モビール作家が制作したオートモビルの作品は、残念ながら7時間でコースアウトする。その後、アートカーの制作はBMWがイニシアチブをとるようになり、現在に至っている。