円高で輸出産業はのきなみ業績下降修正だけど、個人的にはドルやユーロに比べ円が高くなるのは大歓迎だ。3日間、打ち合わせや取材の予定は入れずに、ドルを買って、PCを持ってサイパン島に出かけた。原稿がいくつか残っていたので飛行機の中と旅先で書いた。80年代のサイパンは日本人観光客が圧倒的で、成田からサイパンへのJALの定期便リゾッチャもあり、島内には日系企業のホテルやショッピングモールがたくさんあった。今はもうほとんど残っていない。JAL WAYSは定期便を中止した。来島する日本人観光客が少なくなったからだ。ニッコーサイパンも名前が変わっているし、名鉄が建てたグランドホテルやサイパン第一ホテルは中国系企業に買収された。近鉄グループのハファダイビーチホテルは、今は日本のホテルチェーン、ルートインが運営している。名鉄マートもなくなっていた。代わりに中国本土や韓国からの観光客が増えているみたいだ。アメリカの準州グァム島と違って入国審査が緩やかなのでロシア人も多い。ネットの最速はADSLで、ホテルのロビーで無線LANがつながった。

サイパンは漢字では彩帆と表記されていた。第二次大戦までは日本が統治していて、3万人近い日本人(当時、台湾、韓国出身者含めて)が暮らしていたらしい。でも第二次大戦末期には、連合軍の上陸で、この島で多くの人命が奪われたという深刻な過去がある。その様子を描いた藤田嗣治の戦争画「サイパン島同胞臣節を全うす」は、残酷過ぎて当時は公開されなかったはずだ。サイパン島北にあるスーサイドクリフ(自殺断崖)の名前は、連合軍に追いつめられ、投降に応じなかった大勢の日本人の投身自殺に由来している。その島が今ではビーチリゾートになっているわけで、太陽と海の力はスゴいなと思う。