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MUJI manufactured by THONET [デザイン/建築]

THONETって謳ったら「無印」ではなくなるような気がする。

深澤直人さんが無印良品のプロダクツの画期的なデザインを手掛けていることは、この手のネタに興味のある人なら誰でも知っていることだ。現に、深澤さんとジャスパー・モリソンによる「スーパーノーマル」展のリーフレットには、無印良品の製品のデザイナーに深澤さんの名前が明記されていたように記憶している。でも深澤さんの仕事として無印良品の製品を紹介しようとすると、良品計画の広報部からはデザイナー名は公表していないという連絡がある。みんな分かっているけど言えない。何とも難しいところだな。原理原則に縛られ過ぎな感じがしないわけでもないけど、こうしたところが無印良品の真面目さでもあるわけだ。

そんな無印良品が「MUJI manufactured by THONET」と名付けられたシリーズを売り出すとは。トーネットはデザイナー名ではないけど、間違いなくブランドですからね。ひょっとすると無印良品とMUJIは性格が異なるラインということなのかも知れない。これから毎年、コレクション的に「MUJI manufactured by ○○」という製品を発表していくのだろうか。日本デザインセンターの原研哉さんが無印良品のディレクターに就任した直後、ぼくは原さんのレクチャーを聴きに行ったことがあった。そこで、当時、日本の市場で、海外展開のためのMUJIと無印良品という二つのロゴが混在しているので、イメージが拡散しないように整理したいと話していたことを思い出した。

それで肝心の製品のデザインを見ての話なんだけど、14番のリデザインの曲げ木の椅子は、残念ながらトーネットの14番の良さの一つが殺されていると思った。トーネットの14番の優れた特長はいろいろあるけど、実際に使っていたユーザー(ホンモノのトーネットではなくてチェコ製の廉価版ですが)として書かせてもらえば、この椅子は背中が丸く開いていることに意味があると思うわけ。そのおかげでちょっとした移動が簡単なのだ。例えば掃除機を使っている時は片手が塞がっているので、椅子を移動するのは結構面倒くさい。普通は手がかりになるところを掴んで持ち上げて移動する。掴む、運ぶの二つのカラダの動きが必要になる。でも14番は、手が塞がっていても、仮に手にグラスやカップを持っていても、丸く開いた背中にぐいと腕を入れて持ち上げればほぼワンアクションで簡単に移動できる。肘でも動かせる。持ち上げるために何かを握る必要がない。ホントに扱いやすい椅子だった。これもカフェで大量に使われた歴史の中で選択され生き延びた「背のデザイン」だったのではないかと思う。でもMUJIの曲げ木椅子は横に直線のパネル状の桟が入っている。これではすっと腕が通らないし、桟の下に腕を入れても、ラウンドした背は自動的に安定する個所に腕が行くが、直材だと自分でバランスをとらなければならない。そんな無精者の戯言なんてどうでもいいじゃん、と思うかもしれないけど、ぼくはこれだけで使い勝手が後退しているように見えたのが残念。文句ばかりで済みません。ちなみにテーブルと合わせた時に、背のパネルのラインが天板の厚みに重なって消えるように考えられているらしい。これも深澤さんのデザインなのかな。

追記:曲げ木椅子はジェームス・アーヴァイン、鋼管家具はコンスタンティン・グルチッチのデザインだそうです。

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左がMUJIの曲げ木椅子で右が14番。写真は無断転用です。問題があれば削除します。

曲げ木だけならMUJI manufactured by 秋田木工でも良かったんじゃないかと思うけど、マルセル・ブロイヤー Marcel Breuerがデザインしてトーネットが製造した鋼管家具のリデザインも発表されていた。このパイプ家具のほうは、多少高くなってもいいからステンレス製が欲しいと思った。これは個人的な好みの問題で、粉体塗装のテクスチュアが嫌いなのだ。スチールはスチールらしく冷たくてギラギラしているのが好きで、ブロイヤーの家具の良さもそこにあると思っている。ワシリーラウンジチェアのパイプが塗装仕上げなんてぼくには考えられない。でも今回の商品の中でローテーブルはかなり良いと思う。これは塗装仕上げでもいいや。でも42000円はちょっと高いかな。

事務所で使っているブロイヤーのローテーブル(バウハウスではスツールとして使っていた写真もあるそうです)は、製造者の刻印がKnollではなくGAVINA SPAになっている。ガヴィーナがノールにブロイヤーの家具の販売権を譲渡したのは1966年だから、このテーブルは少なくとも42年以上前につくられたということになる。脚はクロムメッキ。ネストテーブルか組み合わせ家具の一部らしい。今はイームズ夫妻の小さなテーブルと組み合わせて使っている。

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個人的な意見としてぼくがいちばんしっくりくるのは、MUJI manufactured by innovatorだ。innovatorの製品とデザイン思想こそ、無印良品の理念を先取りしていたと思うからだ。一時、無印良品ではヤン・ドランガー Jan Drangerが開発したエアソファを取り扱っていたけど、innovatorを設立した二人のデザイナーの一人がドランガーだった。もう一人はヨハン・フルト Johan Huldt。当時は多くのモダニストがそうであったように社会主義のシンパだったそうだ。70年代のスウェディッシュデザインに革命をもたらしたinnovatorはもっと評価されるべきだと思う。




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