ボタニストにしてアーティスト、パトリック・ブラン Patrick Blancの記事を少し前にVOGUE NIPPONに書きました。



地上に建築を建てるということは、緑が茂る大地を、植物から奪うことである。そこで近代建築家たちは屋上庭園という方法で、植物から奪った大地を返してあげようと考えた。しかし、その努力も虚しく、都市から緑は失われていく。多くの建築家が今、植物学者で現代美術作家でもあるパトリック・ブランが手掛ける“垂直庭園”に注目するのは、私たちが暮らす都市には、緑が必要だと痛感しているからだ。建築家だけではない。インテリアデザイナーもファッションデザイナーも……。

「幼少より植物が好きで、母と森を散歩するとコケやシダに興味津々の子供でした。ある時、水族館の大きな水槽に植物が生い茂る様子を見て、土がなくても、水と光があれば植物が育つことに驚いたことが、今の私の制作活動につながっていると言えるでしょう」と子供時代を振り返るパトリック。その驚きを新たにしたのは、大学で自然科学を学んでいた時のこと。19歳で彼は初めて東南アジアの熱帯雨林を訪れ、滝の岩の裂け目に、露になった木の根の上に、土がなくても植物が元気に育っている光景を目の当たりにする。帰国後、パトリックは土を使わない植物の生育の研究に熱中し、それが今日の垂直庭園の技術の基礎となっているのだ。