とある印刷物にHOYAクリスタルの記事を書きました。

クリスタル製品のデザインは極限すれば光の反射と拡散だけ。色も柄もなく、光が通り抜ける透明ガラスに、いかに光を留まらせるか。技術が光に晒される逃げ場のないデザインと言える。それゆえ優れたクリスタルは、文化や時代を超え賞賛されるのである。HOYAクリスタルは世界が讃えるブランドの一つだ。

日本にデザインという言葉が浸透する前、戦後いち早く“デザイン”に目覚めたのはガラス製品業界だった。HOYAクリスタルも、戦後デザイン教育を受けたデザイナーを積極的に採用し、日本のモダンデザインの発展に貢献してきた。船越三郎、川上恭一郎といった名デザイナーが同社の窯に集い、海外のガラス美術作家の作品に負けない優れたプロダクツを手掛け、国内外で多く受賞に輝いている。透明素材と光の最小限の要素によるミニマルなデザインは、陰影に対してセンシティブな日本人の“光覚”に適っていたのかも知れない。

近代デザインの大先輩のHOYAが、21世紀に再び“デザイン”を謳い始めたのは興味深い。起用されたのはイギリスとニュージーランド出身のクリエーターデュオ“生意気”。北半球と南半球の光の感受性が、HOYAクリスタルの光をどう変化させていくのか。熟練ガラス職人がその感性にオールハンドメイドで挑む。