先日の出張の帰りの新幹線で、国立感染症研究所の研究員、岡田晴恵さんが書いた小説「H5N1」を読む。
H5N1というのは高病原性鳥インフルエンザウイルスのこと。この本はフィクションで、鳥インフルエンザ日本上陸のシミュレーションストーリー。インフルエンザと言っても呼吸器に限定した感染の弱毒性ウイルスではなく、鳥インフルエンザは全身感染を引き起こす強毒性で、感染者は最短4日で脳炎や多臓器不全で亡くなる。致死率はエボラ出血熱と同等の60%。単純に比較はできないと思うけど、1918年に全世界で1億人(4000万人とも)、日本国内で45万人以上が死亡したグレートインフルエンザ“スペイン風邪”でさえ弱毒性ウイルスだった。で、昨日、世界保健機関は中国で1つの家族から2人の鳥インフルエンザ感染者が確認されたと発表した。これは高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスがヒトからヒトへ感染した可能性も考えられるらしい。ヒトへの感染の恐れは今年の夏頃から国連や世界銀行から発表されていたが、ついにその日が来てしまったのかな。北京オリンピックを目前に控え、ちょっとした問題になるような気もする。
厚生労働省がまとめた「新型インフルエンザ対策報告書」によると、世界的な大流行が起こった場合、日本国内の患者数は最悪の場合で2455万人、死者は16万7000人に及ぶとされている。
致死率が60%なら16万人というわけにはいかないような気もするけど。最近の日本人はテレビのキャスターのひとことで簡単に加熱するくらい沸点が低くなっているから、何かの拍子でタミフルの壮絶な奪い合いが始まるんだろうなと思う。とにかくタミフルで狂い死にするとか、三日寝れば治るとか、そんなこと言っていられないような状況は刻々と近づいているみたいだ。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/09/tp0903-1.htmlhttp://moura.jp/clickjapan/influenza_book/http://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/news/images/071015_okada.pdf 「H5N1」で綴られたシミュレーションストーリーはホントに悲惨な展開で、これは最悪の最悪の状況の場合の話だと信じたいところだ。映画の「復活の日」みたい。いずれにしても映画とかレテビドラマ化して、煽らない程度に啓蒙したほうがいいんじゃないかな。日本は未だに感染症も自分の不注意で体調を崩すのも一緒くたで、その上「病は気から」の精神論的なところがあって、風邪で仕事を休むのを潔しとしない文化が脈々と続いているから。日本のビジネスマンは少しの発熱なら、風邪かインフルエンザか分からないままフツーに会社に行って、通勤電車の中で咳やくしゃみをしたり、これって本人は「風邪くらいで会社は休めない」と思っているんだろうけど、回りにいる人にはホントに迷惑だよな。どれだけウイルスを巻き散らかしているんだよ。こういう人たちがいる限り、日本でのインフルエンザ大流行は避けては通れないと思う。風邪を引いたら仕事を休む文化が育つといいですね。ヨーロッパはペストの大流行を経験しているので、感染症に対する意識が日本とは違うと「H5N1」には書かれていた(外出できなくなるので食料を備蓄しておくとか)。
小児科医で小樽市保健所長の外岡立人さんは、毎日5時に起きて世界の鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ情報を集め、翻訳して、国内の医療関係者に情報提供する「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」というサイトを主催している。外岡さんは「H5N1」に登場する北海道H市の保健所長酒井俊一氏のモデルと思われる。
http://homepage3.nifty.com/sank/