窓を開けると数日前まで風はキンモクセイの香りがしていたのに、最近はどちらかと言うと鉱物的な匂いに変わってしまった。9月の半ば、ネコの公園の近くに小さなピンクと黄色の花が咲いていて、夕方になるととても良い匂いがしていた。そんな話をガールフレンドにしていたら、家の近所の生け垣の灌木に同じ花を見つけた。やれやれ、この花の名前を知らないの。男の人は花の名前をぜんぜん知らない。男は花のボキャブラリーの貧しい世界で生きていている。でも、ぼくは虫の名前はたくさん知っている。でもでも、花は人に喜びを与え、時には心を穏やかにするけど、虫は不快にさせる場合が多い。うん、確かにその通りだ。正直なところ、なぜかぼくは、花の名前を覚えられないんだ。子どもの頃から10くらいしか知らなかった。それにぼくが育った北海道と東京では咲く花の種類も違う。
その花の名前はオシロイバナだと教えられた、別名は夕化粧。英語ではFour o'clock。夕方に咲き、口吻の長いスズメガやスカシバが蜜を吸いにくる。

       

こんな長閑な町だけど、数年後には60階建ての複合ビルを中心とした再開発事業が始まる予定だ。完成は平成25年だと言っていた。実はこの再開発の説明会が近くのビルの会議室で行われて、ぼくも近隣住民の一人として聞きに行った。ぼくの場合は興味半分だが、この町に長年住んでいる人にとっては失われるものは少なくない。