先週はベルリンからグラフィックデザイナーのカロリン・シュタインベックが来日していて、仕事の合間に少しだけ東京見物に付き合って、ぼくも新鮮な目で東京を楽しむことができた。カロリンは帰国するのにコンテナが必要と言ってたけど、ぼくも始めてヨーロッパに旅行した時はそんな気分だった。



カロリンはチェリストのガブリエル・リプキン Gavriel LipkindのCDジャケットと冊子のデザインを手掛けていて、今回はガブリエルの来日公演に合わせて東京にやって来た。最初の1週間はメタデザインで仕事をしているウーラも一緒だった。ガブリエルの演奏は、サントリーホールのロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団との共演しか聴きに行くことができなくて残念だったけど、サントリーホールで独奏したチャイコフスキーも素晴らしかった。結局ガブリエルは2曲演奏しただけで、休憩後のショスタコーヴィチの交響曲《革命》は客席で聴いていた。この演奏のウラディミール・スパヴァコフの狂気を感じさせる指揮は圧巻だった。最初の緊張感はロシア民謡風のリズムに飲み込まれ、演奏者自身も音に陶酔して、ステージの熱がどんどん上昇していき、革命の勝利を打楽器の連打に至る超ドラマチックな演奏だ。

ステージが跳ねてからウーラたちと「オーバカナル」で軽い夕食を食べていると、演奏を終えたガブリエルとカロリンも同席して、件のスパヴァコフの指揮の話になった。ガブリエルは演奏中はほとんど目を瞑っているのだけど、目を開けると、すぐ前に高揚したスパヴァコフの顔があって、それがあまりに激しい表情だったので、慌ててまた目を閉じたという話。どんな顔で指揮をしているのか気になるところだ。