近所を歩いていると人からはあまり挨拶されないけど、ネコからはよく挨拶される。
駐車しているクルマの下にいたり、垣根の上を散歩中だったり、鈴を付けた家ネコからも顔なじみのノラネコからも「にゃー」とか「にー」とか声がかかる。お愛想だけのネコもいれば、何かを言いたげな目のネコもいる。キラキラした目でこちらを振り返りながら、急に走り出して「オラのあとをついてこい!」みたいな雰囲気なんだが、おまえが駆け込んだ苔だらけの暗くて狭い路地は人間には入れないんだよ。本当は後をついていきたいのだけど、人間で申し訳ない。そのネコはぼくをどこに連れていこうとしたのだろう。

近所のネコの中でいちばん気安い茶色のノラネコ(1.5歳)は、通りで出会すと大げさに駆け寄ってきて、足下に頬ずりを始め、たまに遊びでスネに噛み付いたりする。歩く足下に遠慮なくまとわりつくものだから、注意して歩かないと踏みつけてしまいそうになる。ノラネコらしい毅然としたところがなくて、ちょっとアタマを触るだけで喉をぐるぐる鳴らしたりして、沸点はかなり低い。どんなドライフードでも喜んで食べる。