学生の頃は渋谷で遊ぶことが多かった。当時はパルコ文化全盛期で、客層も今ほど若くはなくて、身の丈に合った街だと思っていた。渋谷にはいろいろな思い出があるから、その頃あったお店や建物がなくなるのは少し悲しい。ぼくの場合、思い出はアタマの中ではなくて自分の外側にある感じがする。建物や場所に自分の記憶が宿っていて、そこに訪れたり、それを見ると思い出せるけど、「それ」がなくなると何も思い出せなくなる。「東急文化会館」がなくなって、今はまだ記憶が蘇るけど、これが新しい建物になるぜんぜんダメだ。昭和の記憶が死蔵してしまう。
今、「シネマライズ」がある場所には、かつて「ホテルオリエント」というラブホテルがあった。ラブホテルって、たぶんいろんな秘密や、それなりに大切な思い出が詰まっている場所なんじゃないかと思う。仮に客室が20室で一日2回転するとして、1年間で1万4000以上の、覚悟とか落胆とか驚喜とか酔った勢いとか、まあ、人々の喜怒哀楽の舞台となってきたわけで、それが壊されるのは何とも切ないものだと、「ホテルオリエント」の解体現場に佇み感じたことがある。ちなみにぼくは「ホテルオリエント」に足を踏み入れたことはないけどね。
そんな「ラブホテル」業界のための「レジャーホテルフェア」という見本市が毎年開催されているのだけど、例年通りだと6月末なので、そろそろかなぁと思い、スケジュールをチェックしたら、今年はもう終わっていた(がっかり)。
「ラブホテル」と謳うと風営法対象の業種になるので、最近できる「ラブホテル」は普通のホテルとして申請して、建設されているのがほとんどだ(と思う)。なぜなら、現在の東京23区で風営法対象の新店舗を開業できる場所は限られているからだ。歌舞伎町も区役所の中に「図書館」という文化施設があるから、既得権業者以外は風営法の営業はできないはず。じゃあ、ラブホテルと普通のホテルの違いって何かと言うと、昔の風営法時代の事しか知らないけど、例えば客室の鏡張り部分の面積の制限があったり、浴室をガラス張りにできないとか、ベッドには睡眠のため以外の機能(回転したり、上下に動いたり)を付加していはいけないとか、入り口を隠してはいけないとか。ラブホテルとして申請すれば回転ベッドも鏡張りの天井も許可されるけど、普通のホテルではできない事があるというわけ。
ある時期、ラブホテル業界では「オシャレなシティホテル」みたいなラブホテルを目指したこともあったのだが、それは一過性のもので、早々に軌道修正がなされた。なぜなら、ラブホテルの競合相手って、自分たちが目指していたシティホテルだったからだ。分かりやすい例を引けば、クリスマスの夜のシティホテルはラブホテルとまったく同じ使われ方だ。このままではシティホテルに溢れた人がラブホテルを使う、なんてことになりかねない。競合相手と同じスタイルを目指しても、スタート地点が違うから勝ち目はない。それでラブホテルは、シティホテルにないエンターテインメントの要素をどん欲に採り込むことで差別化を図ろうとした。カラオケ、大画面テレビ(液晶プロジェクター)とオンデマンドビデオ、有線放送、エフェクト照明、ビデオゲーム、浴室内の小型テレビ、ジェットバス、浴槽照明、サウナ&ミストサウナ、電子レンジの設置、基礎化粧品&クレンジングのフル装備……。快楽にまつわるモノは何でも客室に導入してしまえという感じだ。ラブホテルは客室回転数がシティホテルの3倍以上あるので、シティホテルの3倍のコストをかけることができる。通常ならユニットバスだけど、ラブホテルならユニットじゃない浴室をつくることができたり、それなりの設備投資もできた。ラブホテルで培われたシステムは、今では逆にシティホテルにスピンアウトされるようになっている。そんなわけで「レジャーホテルフェア」はマジ必見の見本市だったのだが、今年は見逃してしまい残念だ。
http://www.sogo-unicom.co.jp/pbs/fair/lhf/index.html
話は変わって……。
橋場の人生最高のセレクトショップ「MANUFACTUM」がご近所にない生活は、砂漠で砂を噛みながら暮らしているようなものだとしょぼくれてていた昨今、ウェブのインターナショナル版で買い物ができるかも、と試してみたらフツーに買えた! 納期は約1週間。喜び過ぎて腰痛が……。今回買ったものは、ニースで古よりビターオレンジとレモンの木を持っているジャム職人がつくった完全手作りのビターマーマレード。D.R.Harrisのアイジェル(ガールフレンド用)、コットンとリネンの混紡ティータオル6枚、Kawecoの万年筆とボールペンのセット(革製ケース入り)、キャンバス製のファイルベルト(書類結束用)を6本。ドイツのヘアワックス専門メーカーBrillantineの製品。合計106ユーロ。送料と税金が相殺(?)されて、実質送料負担は約5ユーロ。画期的だ。これなら日用品を気軽に買える。ギフトにもいい。インターナショナル版はドイツ語版に比べてアイテム数が少ないので、それだけが残念(特に食料品)。あと、インターナショナル版はなぜか値引き商品が多い。在庫処分のための売り場なのかも知れない。中には日本で買えるものもあるけど、EU製の商品は送料を払ってもこのサイトで買うほうがぜんぜん割安だ。ネットだと衝動買いがないからいいよね。ん、ドイツ語版のサイトでも買えるかも……。
ネコレストランに子猫も来た。ほぼカレーパン大。ちっちゃいなー。