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筑紫哲也さん [その他]

筑紫哲也さんが亡くなったんですね。合掌。

わが家にはテレビがなくて、テレビ番組は出張先のホテルで見る程度。テレビのニュースもかれこれ5年以上ちゃんと見ていないと思うので、筑紫さんがキャスターだったニュース23もほとんど記憶に残っていない。筑紫さんは、言葉尻をとらえて批判されたり、ネットでは反日プロパガンダとか偏向報道と批判も多いけど、個人的には著しく偏向していたとも思わなかった。ニュースも歴史も誰かに語られた時点でバイアスがかかるものだと思うし、たぶん署名記事のコラムを読むようなもので、すべてのメディアの温度が常に一定というのも気持が悪い。それでもAmazonの筑紫哲也さんの批判本のレビューを読むと、蛇蝎のごとく嫌う人々がいることも分かる。そんな角度から見ると、ぼくも筑紫の偏向報道と妄言に洗脳された反日脳の自虐非国民に見えるんだろうか。対立意見の陣営からは恫喝や脅迫もあったと思う。スタジオを離れ、現場に足を運び、そこで実感したことをぼくたちに伝えようとする姿勢は、さすがジャーナリスト出身だと頼もしく思った。
ただそんなことも過去の記憶だったりするわけだ。

事実を目の間にすれば個人の主義主張や見識も揺らぐものだ。人の理性は、空腹とか天気とか夢とか、どうしようもないものの影響も受ける。思い出したくない思い出のフラッシュバックを受け止めなければならないこともあるだろう。毎日テレビで、誰とも知れない大多数に向かって定見を示す仕事は、暗闇の中で降り続く雨に濡れながら米粒を数えるようなことだと思う。筑紫さんの仕事は、お気楽なネットジャーナリストと単純には比較できないし、レトロメディアの言論とネットの言論はそれぞれ覚悟も違うはずだ。どちが重大だとか軽いとか、そう問題ではない。

子どもの頃、テレビ朝日系列で「日曜夕刊!こちらデスク」という番組があって、筑紫さんはそのキャスターを務めていた。たぶん初めてのテレビの仕事だと思う。ぼくはこの番組が大好きで、その頃は筑紫さんみたいな新聞記者になりたいと思っていた。本も読むようになったし、高校生の頃は麻布高校で開催された全国高校生編集社会議にも出席した。結局は新聞記者にはなれなかったけど、文章が印刷物に載る仕事に就けた出発点は、遡れば「日曜夕刊!こちらデスク」の筑紫さんを見たことだったと思う。

昨夜、ある歓楽街の外れで20代と思われる男性2人のケンカに出くわしてしまったのだが、その片方の言い分がネオナチみたいでびっくりした。いろいろうまくいかないことがあるのだろうか。その憤懣の矛先が外国人への憎悪にロックオンされていて、仮に彼が国外で日本人であることを侮辱されたらどんなふうに思うのだろう。その想像力が怒りで蒸発して、完璧に乾燥した様子だった。大声の雑言のネタとなる情報や知識は、たぶんネットで齧って、感情のままに盲信してしまったのではないかと思った。彼が言う“事実”は、ぼくもいろいろなサイトで目にするものだったから。憎悪は伝染する。ぼく自身、影響を受けやすいほうなので気をつけている。ネットで書かれていることがすべてウソとは言わないが、事象はいろいろな見方があって、いろんな角度から見ることで初めて立体視できるわけで、せめて、その一つの視点としてカラダに収めるべきなのに、個人の感情に訴えかける情報は収め方が難しいのだ。それを悪用する人もいる。これからますます「うまくいかなくなる」社会になるのだと思う。失業率も増えるし、お金のための自殺や殺人も増えるだろう。心の律し方が難しくなるが、それを律するものがナショナリズムで良いのだろうか。それはあまりに簡単過ぎるだろう。残念ながら日本版ネオナチが育つ環境は整いすぎていると思う。そんな時代に筑紫さんのような論客が亡くなったのは、ある意味、象徴的なニュースだと思った。カウンターバランスになる人やメディアは、既に失われたような気もするし。




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