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デリヘル摘発 [その他]

ヨーロッパのホテルで夜中にテレビを点けると、裸の女性がくねくね踊ってるコールガールのCMばかりが延々と続く。どれも電話番号を連呼するCMなので、これでドイツ語やイタリア語の数字の呼び方を覚えた人もいるかもね。日本でこの手の仕事は、かつてはホテトルとか呼ばれていてイリーガルな業態だった。2006年に大幅改正された“風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律”通称風営法で、無店舗型性風俗特殊営業の1号営業「派遣型ファッションヘルス」通称デリヘル(デリバリーヘルスとデリヘルは某出版社が商標登録出願中だ)として公安委員会への営業届け出の対象となり、これを機に、同様の営業(ホテトルとデリヘルのサービスは同じではない)は、晴れて公安委員会の管理の対象になった。つまり商売として認められてたわけだ。風俗営業と言うのは、かつて風俗警察が管理していた業態を指す。ぱちんこ、ダンスホール、キャバレー、麻雀店など。かつては刑事警察に他に風俗警察があった。それが現在の公安警察なのだろか。詳しいことは調べてみないと分からない。1948年に“風俗営業取締法”として制定されたものが、今の風営法の始まりだ。えーと、そんなことはどうでもいい。

石原慎太郎都知事は歓楽街歌舞伎町を目の敵にしているようで、違法風俗営業店の摘発にも異常なまでの熱心さで当たっていた。本当に悪質なお店もあったはずだし、どんな人も叩けばホコリが出るように、無理矢理叩かれて出なくていいホコリが出た店も多かったと思う。それで店舗型の風俗営業店は壊滅状態となり、風俗営業が詰まっていた歌舞伎町の雑居ビルはスカスカになった。ビルオーナーに「今後(違法の)風俗営業は入居させない」という念書を書かせたという話だ。その代わりというわけではないだろうが、派遣型の業態が増えている。その隆盛ぶりは夕刊紙の三行広告を見ると一目瞭然だ。日刊ゲンダイの“盛り場ニュース”でも、毎日、風俗店を紹介する「もうタマランチ会長。」の名調子が普段の誌面から消えて久しい。店舗型が激減しているからだろう。ついでに書くと、25年以上の連載の歴史があった横山まさみち氏のマンガ「やる気マンマン」も、作家の没後は過去作品の再録のかたちで続いていたのだが、これも終了してしまったみたいだ。
えーと、そうそう、こんなことはどうでもいい。

ちょっと古い友人でデリヘルで働いてた女の子がいた。本人が特定されると困るので詳しいことは書かない。それにもう仕事は辞めている。先日2年ぶりに会って、ランチを食べながらいろんな話をした。というか、話を聞いた。少し前のことになるけど、彼女が働いていたデリヘルの事務所に突然警察の手入れが入った。違法行為をしているというタレコミがあったんだな。そこで働いていた女の子の家にも警察が来て、任意同行で取り調べを受けたそうだ。警察が家に訪ねてくるっていうのは、家族と一緒に暮らしている人にはかなりコタえるみたいだ。彼女も警察に出頭して調書取られたんだけど、その話が酷いんだ。

違法行為というのは、事務所の責任者が客との本番行為を強要したってことなんだけど、彼女の話ではそんな事実はぜんぜんなくて、ちゃんと風俗営業の届け出もしてるマトモな店だったらしい。だから警察でも「そんな事実はありません」と証言して、「ああ、そうでしたか」と話は終わり、それから穏やかな雰囲気で小一時間、刑事さんと世間話をしたそうだ。で、「じゃああなたの証言を読み上げますので確認してください」と、ああ、これで帰れると思ったら、その調書の内容が「店の責任者は私に客との性交を強要し……」なんだって。「違います。もう一度話しますからちゃんと書いてください」とまた同じ話をするんだけど、調書を読み上げるとまた一緒。そんなことの繰り返しの根比べでほとんど1日潰れてしまい、結局最後は根気もなくなり「調書の通りです……」と言わざるを得ない状況になってしまったと泣いていた。仲が良かったほかの女の子に聞いても同じだったって。結局その店の責任者は逮捕されて店も閉店だ。

「犯罪者ってこうやってつくられるんだ」と思ったそうだ。
すべての取り調べがこんなふうに行われているとは思わないし、ぼくは警察官には敬意を払うけど、どうしようもない力が働く場合もあるじゃないかな。ホンモノの犯罪者もいるが、つくられる犯罪者もいるんだ。ぼくらには分からないいろんな事情があるんだろう。最近、役人や議員秘書が痴漢で逮捕されて記事になっているけど、本当のところはどうなんだろうね。例の植草さんもそうだけど、今の自分にはどちらの言い分も信用できない感じだ。それでどっちが信用できないほうが怖いかと言うと……それは言うまでもないよな。ぼくらはそんな世の中で暮らしている。デリヘル摘発は、こう言っちゃなんだが小ぢんまりとした話だけど、もっと大きな世界でも同じようなことが起きてるのだと思う。それで何となく社会がうまくいってるとしたらやり切れないよな。もっとも、ぼくも彼女の話が真実であることを前提として書いているわけで、それを疑い始めるともう何が何だか分からなくなる。客観的事実も語られた時点でみんなフィクションになってしまう。

映画「羅生門」の最初のシーンで志村喬と千秋実が暗い顔で「人が信じられなくなった」って言うんだけど、知らなくてもいいこと知っちゃうと、世の中、信用できるものがどんどんなくなっていくような気がする。客観的事実って何なんだろう。「羅生門」って深い映画だなと思う。ベネチアで金獅子賞を受賞した作品だから、あの救いようのない“大人の感覚”は世界のあらゆる文化圏の人たちにも理解できたというわけだ。というか実感できた、という感じかも。ちなみにRashomon(羅生門)って、Rashomon Effectって英語の言葉になってる。

法律守って暮らしてても犯罪者になる可能性はゼロじゃない。取り返しのつかないことって、意外に身近にあったりする。気をつけててもどうしようもないこともある。それ以来、毎朝星占いとか読むようになっちゃったよ。

羅生門 デラックス版

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  • 発売日: 2002/09/06
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デリヘルはなぜ儲かるのか

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やる気まんまんザ・グレイトセレクション―横山まさみち作品集

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Kyoko  Asakura

久しぶりに覗いてみたら、ブログ復活されてて嬉しかったです。ごぶさたしてます! 日本の活字に飢えてるので、橋場さんのブログいつもおもしろくて刺激になります。わたしも羅生門、好きですよ。森雅之と三船のコントラストなど何度見てもすごいですね。
ニュー新橋ビルの記事もいつも東京に帰ると電車から目に入るのに一度も足を運んだことがなく、なんだか新鮮でした。フリオ、バルセロナでは人気ないですね〜。「アホの代名詞」うちのダンナ(スペイン人)はフリオの歌だけ聞こえる部屋に閉じ込められたら気が狂う〜といってます。では、また!
by Kyoko Asakura (2007-07-15 00:57) 

hsba

Asakuraさん、お久しぶりです。
フリオは日本でももう人気はないと思うけど、根強いファンがいるのかも知れません。羅生門は名画ですね。時々DVDを観ます。最近は三船敏郎みたいな俳優っていなくなりましたね。しばらくは昔書いた原稿や、別のサイトに書いた日記をアレンジしてアップしていきます。
by hsba (2007-07-16 00:32) 

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