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落合夫妻とその息子 [その他]

神田川沿いの道を歩いていたら顔馴染みの白ネコに出会した。白ネコだけど耳とシッポの先っぽだけは茶色い。飲み物に例えるとラテマキアートだ。ぼくがこのネコと遊んでいると、通りすがりのビジネスマンが「ノラちゃんですか? かわいいですねえ」と挨拶して近づいてきた。そうすると白ネコは急に踵を返し草むらに逃げ込んだ。「何でだろう。嫌われたのかなあ」と30代前半と思われるスーツ男が苦笑しながら肩を落とす。「ぼくはいつもゴハンあげているから……」と答え、しばらく立ち話をしていたが、白ネコは草陰に気配はあるものの顔を出すことはなかった。この白ネコはいちばん最初に仲良くなったノラネコで、どんな人にもベタ馴れなのだろうと思っていたのに、予想外に人見知りだったことを知り、それでも自分には愛想良く挨拶してくれると思うと、ますます愛おしくなってしまう。というよりは、やっぱり日々のゴハンの威力は大きいということだな。

パスポートが失効していたことを思い出して、早起きして朝から旅券申請の準備をした。戸籍抄本が必要になるため、本籍がある札幌の区役所に速達で戸籍郵送願いを送り、念のため父に電話して二重で発行手続きをお願いする。それから顔写真を撮って、都庁に書類をとりに行って、とりあえず今日はここまで。その後、次の打ち合わせの予定まで2時間以上あり、家に戻るのは面倒だし、昼食後で一眠りしたい感じだったので、高層ビルのショッピングアーケードにある床屋に入り爪を磨いてもらう。床屋の椅子はフラットになるし、ふくらはぎと腰が当たる部分にはマッサージ用のバイブレータも付いている。床屋の椅子は長時間座っていてもなぜか疲れない。藤子不二雄先生はわざわざ仕事場に床屋椅子を取り寄せて使っていた、というエピソードをいちばん最初の「まんが道」(連載になる前)で読んだことがある。ちなみに床屋の椅子は1脚70万円以上するらしい。その椅子の背を倒して、枕の代わりに蒸しタオルを丸めて首の裏に当てると、砂糖がお湯に溶けるようにふわっと意識が遠のいて、約1時間熟睡する。目が覚めると爪がぴかぴかになっていた。それから書店に立ち寄って、ドトールコーヒーでコーヒーを飲んだ。

もうプロ野球のレギュラーシーズンは終わってしまい、ぼくとってはいちばんどうでもいい中日ドラゴンズという、ホントにどうでもいい「(球団というより)集団」が優勝してしまった。中日ファンには申し訳ないけど、好きでも嫌いでもないというより、まったく無関心のチームで、盛り上がりも落胆もない中日優勝は自分にとっては最悪の結果だった。塩味のないラーメンを食べる感じだ。落合監督は立派な方なのだろうが、前に優勝した時には奥さんと子どもが優勝祝賀会のビールかけに参加していたり、夫人がしたり顔で野球評論しているのを見ると、なんだかやりきれいない気分になる。あの家族のふるまいは選手は納得づくなんだろうか。落合監督(体格の良いご子息も)と福留選手は、不思議なセンスの、場末のちんぴらみたいな洋服を未だに着ている印象がある。あ、手にはクラッチバッグっていうんだっけ。あとは金のチェーンを目一杯体に巻いている感じだ。昔の野球選手のイメージ。ああいう洋服はどこで売っているんだろうね。落合夫人と息子は中部地方のピザ屋のCMに出てるって噂だけど、本当だとしたら痛々しい。

もし阪神タイガースが大逆転優勝していれば、日本中がスゴく盛り上がったのだと思うけど、残念ながら中日なんとかズには数歩及ばなかった。ま、その責任は横浜ベイスターズにもあって、横浜は阪神にも景気良く負けたけど、中日にもありえないくらいぼろ負けだった。今シーズンは、横浜ファンにとっては、森監督以来の暗黒の一年だった。牛島監督は夏前には辞意を発表するし、でもそのまま指揮をとり続けて、やる気があるのかないのか、プロとは思えないユルい野球をやっていた。プロとは思えないというのは、見ているファンが納得いかない采配という意味だ。ラモスが野球の監督やってたのと一緒だよ、気分的には。ついでにチーフエグゼクティブアドバイザーとかいう、ファンをバカにした役職にいる石橋貴明も一緒に辞めてくれ(おまえがいなくてもちゃんと応援できるからさ)。横浜は、セリーグ最弱で恥ずかしいシーズンを終えた上に、さらに恥の上乗りだったのは、最下位監督の牛島を、選手が横浜スタジアムでの最終戦終了後に胴上げをしてしまったことだ。「スポーツありがとう猿」たちがここにもいた。その前の「一筆書き」山下監督もぎりぎり100敗をまぬがれたシーズンの最終戦でなぜか涙の胴上げされたけど、毎回毎回、球団を最下位にした監督をなぜファンの目の前で胴上げする? みんなでライトスタンドに向かって土下座するならともかく、めでたく「胴上げ」かよ。暗澹たる気分で一シーズンを過ごしたファンの気持ちを考えろっていうの。そういうのはファンの見ていないところでやってほしいよな。来年は大矢監督だから、牛島よりは期待できるけど、選手がこれでは先が思いやられる。横浜っていつからこんな「お猿の球団」になってしまったのだ。もうホントに情けない。

横浜には、落合&福留選手風ファッションセンスで、えりあしの長いプロレスラーヘアスタイルの村田某という選手がいるが、今年はクリーンアップ打って良い気になっているけど、毎年、安打の数より三振が多いっていうのはちょっとね。もう一人、吉村という長打力のある新進気鋭の外野手も三振が多くて、そのうち最多三振と最少四球の日本記録をつくるかも知れない。村田選手に加えて、もし吉村選手と、ついでに驚異の2割四番打者佐伯選手もフルシーズン出場していたら三人でシーズン500三振も夢じゃないよな。あーもう、イチロー10人分じゃねえか! とにかく横浜って三振がずば抜けて多い。田代が打撃コーチだからかな。それから投手の被本塁打が多い。これは阿波野が投手コーチだからだろうか。まあ、コーチのせいだけじゃないとは思うけど、これでは勝てないよね。大矢監督には何とかしてほしいものだ。まったく、今年の横浜ファンは愚痴しか出なかったと思うよ。札幌の球団が優勝したのは嬉しいけど。

コーヒーを飲む前に、書店で新潮文庫の「季節のない街」を買う。山本周五郎作。黒澤明監督の「どですかでん」の原作だ。小説を読むと、映画とセリフ回しがまったく同じなので驚く。気の利いたセリフだなあと思っていたのも、山本周五郎が書いたものだった。小説「季節のない街」には、まるでその場にいて、その人の話を聞いているようなリアリティがある。ひょっとすると映画「どですかでん」の映像イメージが残っているからかも知れない。実際、この短編集に綴られた15本の掌編は、「青べか物語」を書くために見聞きした素材ノートから書かれたもので、山本は書くことで、それぞれの物語の登場人物と再会を果たしているのだと、あとがきに書かれていた。山本周五郎は貸本時代の人気作家だったそうだ。開高健が書いた巻末の解説にそうある。

「貸本屋でもっとも愛される作家がもっともいい作家であるというつもりは毛頭ありませんが、身銭を切って日銭をやりくりして本を読む人のなかにはしばしば恐るべき批評家がひそんでいること、これはきびしい事実です。マスコミに氾濫するようなお義理やお世辞の批評はそこからでてくることがないからです。」なるほどね。

こうして開高健の文章を書き写すと、偉そうなことを書いてしまうようだけど、開高健は句読点の打ち方が本当に見事だなと思う。ぼくはいつも、自分の文章には句読点が少なくて読みづらいのではないかと考えるのだが、開高健の句読点の入れ方は本当に潔い。文豪の文章を書き写すと、時々、驚くような発見がある。

季節のない街

季節のない街

  • 作者: 山本 周五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/02
  • メディア: 文庫


それにしても、ぼくが小説を、あとがきと解説から読み始めるのは、「読書感想文」の宿題の影響なんだな。そんなものを読まないで、素直に始めから読めば良いのにと、自分でも時々思うのだが、気がつくと途中で栞を挟んで、あとがきや解説を読んでいる。絵画を鑑賞する時に、タイトル、キャプション、解説文を熟読してから作品を眺めるタイプの人に近いのかも知れない。「タイトルの魔力」という本では、そういう人は教養派で、まず作品を鑑賞してからタイトルを読むタイプは耽美派だと書かれてあった。どちらがダメというわけではなくて、いずれも美術作品に「タイトル」がつくようになってから誕生した人々。18世紀以前は美術作品にはタイトルがなくて、絵画が売買されるようになって初めて、作品を管理するために「タイトル」がつくようになった。今ではタイトルの意味が肥大して、タイトル自体が作品になっている現代美術作品もあるからな。

前にも同じようなことを書いている。パキスタンの現代美術作家アヤツの作品「TITLES」と「なぜ、これがアートなの?」のアメリア・アレナスについて。
http://blog.so-net.ne.jp/hashiba-in-stuttgart/2005-0331


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ようかん

こんにちは。やや古めの記事へのコメントですみません・・・。

> 砂糖がお湯に溶けるようにふわっと意識が遠のいて、約1時間熟睡する。

その瞬間の気持ちよさがリアルに伝わってきました。最近こういう寝入り方をしていないのでとてもうらやましいです。そのあとドトールでコーヒーを飲んだと言うのも(ドトールにふらっと寄って本を読みながらコーヒーを飲むのが大好きだったのですが、残念ながらウィーンにはドトールがありません)。

句読点の話がありましたが、私は句読点が多すぎる文章はあまり好きでなく、橋場さんの文章はちょうどよくて読みやすいです。これからも楽しみにしています。
by ようかん (2006-10-22 23:15) 

hsba

ウィーンはドトールはなくても素敵なカフェがたくさんあるじゃないですか。そちらのほうが羨ましいです。11月に仕事でウィーンのMQに行く予定(たった2日の滞在)ですが、オーストリア政府観光局に通訳の方を紹介してもらうと連絡しているもののナシの礫。少々困っています。
by hsba (2006-10-23 01:41) 

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