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Bunkamura村長 [デザイン/建築]

小春日和と呼ぶには季節はあまりに早過ぎだけど、冬のように寒かった日々が続いたので、そんな言葉が思わずアタマに浮かんだ秋晴れの日曜日。午前中に用事を一件済ませて、ホントに久しぶりにBunkamuraに出かけた。「ピカソとモディリアーニの時代」展を見に行くためだ。Bunkamuraのザ・ミュージアムを訪ねるのはマンレイ展以来ではないだろうか。2002年のマンレイ展ではなくて、1991年夏の「マンレイと友人たち」展だから15年ぶり。ん、その後、別の展覧会も見た記憶があるけど、忘れてしまった。そもそも渋谷にはバスに乗るために駅で降りる以外はほとんど行かないからね。センター街はもう10年以上歩いていないと思う。Bunkamuraというのは居酒屋みたいな名前だなあと、ずっと思っていたけど、最近耳に馴染みやっと違和感がなくなった。Bunkamuraでいちばん偉い人はやっぱり「村長」という肩書きなんだろうか。一時はDASH村と聞くとなぜかBunkamuraを思い出していた。

「ピカソとモディリアーニの時代」展の素朴派と題されたコーナーに、ランスコアという元ロシア貴族(?)の画家の絵が何枚か展示されていて、実は初めて見る名前だったんだけど、スゴイ色使いでびっくりした。なぜか1937年頃の絵画ばかり。というか、ロシア革命で国外逃亡か追放されたんだろうな。貴族だけに浮世離れした雰囲気もあったが、社会主義革命に巻き込まれた貴族の運命が描かれていたのだろうか。あと、ぐっときたのはホアキン・トレス・ガルシアの「宇宙的なコンポジション」という絵画。この作家の名前も初めて知った。もちろんピカソやモディリアーニも展示されている。改めて思ったのは、ミロの絵画は本当に不思議だなということ。不思議なだけにずっと眺めていられる。不意に襲われるような絵もあれば、第一印象はぼんやりしていても、長い間見ていたいと思う絵もあり、どちらかと言うと後者のほうが印象に残る。

ぼくはBunkamuraのインテリアデザインが好きだ。フランス人インテリアアーキテクトのジャン・ミッシェル・ヴィルモットJean Michel Wilmotteは、日本でたくさん仕事をしているけど、Bunkamuraがいちばん上質なデザインだと思う(玉川高島屋のアンヌモネもキレイだったけど、もうないよね)。ぼくのヴィルモットの印象は、ダブルスキンの壁とスリット、あとはシンメトリー。考えてみるとカフェドゥマゴなんて店名が既に「シンメトリー(二体の陶器人形という意味)」で本店はパリだし、ヴィルモット・デザインしてもらうためのカフェみたいなものだ。Bunkamuraが竣工してから、しばらくヴィルモット風デザインをよく見かけたけど、どれもヴィルモットとはぜんぜん違うものだった。 簡単に真似できそうで、できないんだな。ぼくはBunkamuraの中で彼が手掛けた個所は全部分かるつもり。例えば、波のようなメタルシェードが付いたブラケット照明はヴィルモットではない。あれば永原浄さんのデザインだ。椅子、ベンチ、手すり、ポスターを貼るボード、ショーウインドー、円柱形の照明……はヴィルモットの仕事。ホールでは「ル・シネマ」だけがヴィルモット・デザインだと思う。彼は内装材に石(特に砂岩)を多用するのだが、日本の内装施工の石の仕上げ方法は、本磨き、水磨き、ジェットバーナー仕上げ……くらい。でもフランスでは石の仕上げ方法はもっと微妙で、さまざまなテクスチュアがあり、それが職人に伝わらないのがストレスだったらしい。石だけじゃなくてメタルの使い方も本当に美しい。ヴィルモットは韓国の大学の学長に就任したという話だ。


案内板はセンター揃えで置いてほしい。正面の椅子の角度も気になる。こんなことが気になって「整理整頓」できるとしたら、これもデザインの「仕事」なんだろうね。デザインした人はここにはいないけど、意志がしっかり残っている。

Bunkamuraの本屋は出色のインテリアデザインだと思う。実は館内でここのデザインがいちばん好きだ。でも今はいただけない。丸善の頃はまだ抑制が利いていたけど、NADiffの下品な使い方で美しいインテリアが台無しだ。せめてガラス扉が開きっぱなしというのはやめてほしい。ごちゃごちゃ商品を並べるのも、表参道のNADiffなら構わないけど、ここでは合わないと思うのだ。勝手な感想だけど。NADiffにはヴィルモットのデザインの神通力は通じなかったみたいだ。というより鈍感なんだな。たぶん。


非常誘導灯もシンメトリーに配している。実は東急本店のファサードもBunkamuraオープンと同時にヴィルモットが手を入れた。ヴィルモットらしいデザインが見つかると思う。手書き風のBunkamuraのロゴも彼のデザイン。


Jean-Michel Wilmotte

Jean-Michel Wilmotte

  • 作者: Francis Rambert
  • 出版社/メーカー: Editions du Seuil
  • 発売日: 1998/12/31
  • メディア: ハードカバー



BunkamuraからNHK放送センターまで歩いて、そこからバスに乗って新宿方面に向かう。途中で降りて気になる中古オフィス家具店をチェックする。お店は休みなので、ウインドー越しに物色。まず、スチールロッカーの上にMOROSOのリトルアルバートがあった。ロン・アラッド Ron Aradのデザイン。それからセヴンチェアのクッション張り。張り地は合成皮革だろうか。アーム付きだったらすぐにでも買いたいところだ。値段が気になる。

ご存知、チャールズ&レイ・イームズ Charles & Ray Eamesのアルミナム。これはかなりのお買い得感が漂っている。後ろに積み重ねられたスチール机の上には、ガエ・アウレンティ Gae AulentiがデザインしたKnollの椅子がひっそりと並んでいた。ひゃー、お宝満載じゃん。奥にはまだいろいろあるような気がする。


友人の買い物に付き合って、月を眺めながらの散歩の途中、エスクァイア日本版の元編集長(というより東京スタイルの元編集長)から電話があった。氏が懇意にしていたバーテンダーの百人町のお店が閉店になるという連絡をいただき、予定を変更して友人と一緒に件のバーに向かう。そして合流。このお店がなくなるのは本当に残念だ。ぼくはお酒はまったくの門外漢で、何がどう価値があって、どうスゴイのかはよく分からないのだが、このバーのお酒はどれも特別なのはよく分かる。最初に(おそらくかなり)スペシャルなシャンパーニュをいただき、友人はその後、カクテルを4杯飲む。ピーチのリキュール、カシスのリキュール、どれも見た事がないラベルで、香りは本物のフルーツみたいだった。ぼくは最後に薬草酒ユニクムを飲んだ。何度も書くけど、このバーがなくなるのは本当に本当に残念だ。帰り道、風に取り残された雲が青白い寒月にかかる。なぜかミロの絵がフラッシュバックする。


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