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記憶再生NAGOMIスパ [旅/ホテル]

唯一の夏の記憶。
今年は夏の思い出がほとんどない。ビアガーデンにも行かず、かき氷もスイカも食べていないし、鰻も食べていない(食べることばっかりかよ)。2006年は夏がなかった年でした、と言われると、そのまま信じてしまいそうだ。そして昨日から急に寒くなって、このまま冬になってしまうのではないかと思う。秋もなかったことになるのだろうか。

今日、グランドハイアット東京の「NAGOMIスパ&フィットネス」のスパ・トリートメントを受けた(雑誌の取材)。リバイバルという120分のトップセラピストが行う究極のプログラム。天然石をくり抜いた大きな気泡浴槽が備えられた、35㎡以上あるNAGOMIスイートと呼ばれるトリートメントルームで、KERSTINFLORIANのスパ・アーティクルを使って、ユーカリの香りの塩を使った全身スクラブ、ハンガリーの鉱泉泥のボディラップ、フェイシャル、全身のオイルマッサージ……など(体調や目的でメニュー内容が変わるオーダーメイドのプログラム)。こういうのを至福って言うんだろうなと思う。ホントに贅沢な時間の使い方だ。2時間のトリートメントを終えると、ぐったりして、頭もぼんやりしている。でも、明らかにカラダは軽くて、蓄積した疲れを脱ぎ捨てたような気分だった。アーユルヴェーダの施術を受けた後の感覚に近い。マッサージの後にオイルを洗い流していないのに、あっという間にさらさらになっている。いろんなものがカラダに染み込んでいるのだろう。風邪気味で少し頭痛がする以外は、とても気分が良い。で、取材記事に書けないことなど。

とても不思議なことがあった 。

トリートメントの途中、ボディーラップの泥をシャワーで洗い落として、それからバスオイルとソルトを入れたバブルバスに入る。ぼくは松の実のオイルを選び、香りで気分を整え、ミネラルを肌から吸収するのだ。この時間はセラピストの方は退室して、自分ひとりだけになる。室内は夕暮れの浜辺みたいな雰囲気。ぼくは温めのお湯につかって、強めの気泡ノズルを腰に当て、知らない間に眠っていたのかも知れない。でも、回りのモノはちゃんと見えているし、意識もそれなりにはっきりしていたと思う。ぼくがしばらく目を閉じて足を伸ばして首までお湯に入っていると、誰かが同じ浴槽に入っている気配がした。慌てて目を開けると、古い友人のKさんがバスタブの反対側で微笑んでいる。
Kさんはずいぶん前に事故で亡くなっている。だから何かの間違いで本人が同じトリートメントルームにいたということは、絶対にない。でも本人が目に前にいる。その時のぼくは不思議なほど落ち着いていて、気分も鎮静していた。霊が見えたとか、ぞっとしたとか、そういう話ではないので誤解しないでほしい。恐怖心は一切ない。逆にとても静かで落ち着いた気分だった。この日のトリートメントの中で、ぼくは彼女と対面する必然があったのだと、後になって思う。

ぼくはKさんの顔を見て、話しかける言葉を探しながら、いろんなことを思い出していた。
二人は付き合っていたわけではなかったと思う。でもぼくたちは15年くらい前は二人で海外旅行に出かけたり、クリスマスや誕生日はいつも一緒だったし、何よりKさんのことを尊敬していたし大好きだったから、付き合っているとかいないとかはどうでも良くて、当時は、二人で出かけたり、話をしたりするのが嬉しかった。それでも肝心なことでは、彼女とはまったくすれ違いの運命だったようで、お互いに大事なことを伝えようと思った時には、必ずタイミングが悪いアクシデントがあり、それが一度や二度じゃなくて、何も変わらないまま結局、フツーに楽しい時間だけが過ぎていた。運命が本当にあるなら、これこそ二人の運命だったのだと思う。そしてつまらない諍いでしばらく疎遠になり、その後に彼女は結婚して、その後しばらくして他界してしまう。結婚してからはあまり会うことはなかったけど、たまに会うと、思い出話を交わすより、彼女の将来の展望や夢の聞き役になることが多くて、本人が亡くなったこと以上に、果たされなかった想いの大きさに悲しくなった。そんな思い出が一気に蘇ってきた。そして自分の中に何かが帰ってきた。本当に不思議な体験だ。

彼女が浴槽の反対側で何か言いたげにニコニコ笑っていて、ぼくはしばらくその顔を見つめていて、ぼくはぼくで言葉が何も出なかった。しばらく経ってセラピストが部屋に戻り、オレンジとキュウリが入ったミネラルウォーターを持ってきてくれた。それと同時に、Kさんの姿は見えなくなって、でも自分はすごく冷静で、なぜ今この時節に、ここで再会することになったのかを考えてみる。でも、答えが分かってもしょうがないという結論に達し、不思議な気持ちだけがカラダの奥底に沈んでいった。セラピストの方に伝えようと思ったけど、とりあえず自分の中に収めておく。何度も書くけど嫌な気分はまったくなくて、逆に気持ちはとても落ち着いて、これもトリートメントの効果なんじゃないかと思う。ぼくが受けたトリートメントは、心やスピリチュアリティの健康回復も考えられていたからだ。

やがてトリートメントがすべて終了して、セラピストの方のアドバイスをうかがい、いろいろ思い当たることがあるなと反省しながら、帰宅の準備に入る。本来ならロッカールームにあるサウナやお風呂も使ってから帰りたいところなのだが、頭痛が酷くなり、そのまま帰ることにする。水を一杯グラスに注いで、ロッカールームのラウンジにあるリクライニングチェアに体を沈めて、手元のテレビを点ける。ドイツ語の番組があったのでしばらくニュースやCMを観ていた。ドイチェヴェレだった。帰りにサルバトーレ・クォモでグリーンサラダとビザを食べて、1階のスターバックスでコーヒーを飲む。突然、すごい吐き気に襲われて、とりあえず横にならなければと、そのままタクシーで帰宅した。コーヒーがダメだったのかな。ロビーで二日続けてモーリー・ロバートソンさんを見た。

タクシーの中で考えたこと。
実はカラダの表面には直接記憶に繋がるスイッチがたくさんあって、もしくは記憶は脳だけじゃなくて、カラダや内臓にも残っていて、セラピストの施術がそれを呼び起こしたのではないだろうか。何かと何かが繋がっていて、偶然、同じスイッチが入ったのかも知れないし、必然だったのかも知れない。きっと意味があることなんだと思いたい。どんな意味なんだろう。実はいろいろ思い当たることがある。これでまた迷ってしまう。でも迷うことが必然なのかも。簡単に答えが出ることばかりが良いとは言えないし。
車内であまりに体調が悪そうに見えたのか、タクシーの運転手が心配して降車際に「お大事に」と声をかけてくれた。家に帰り、ベッドに横になる。そのまま一気に深い眠りに落ちていったみたいで、ドイツの夢をみている途中で目が覚めると既に深夜だった。頭痛も吐き気も治っていた。明日の食事の準備をしてから、スウェットを羽織り公園のネコにゴハンをあげに行く。昨日は雨で行けなかった代わり、今夜は大きな缶詰を3缶開けて、魚のドライフードと一緒にお皿を出す。やっぱりカラダが軽い。

ぼくが現実だと思っている今この時の現象は、カラダがそれを捉えてから、頭が知覚するまでほんのわずかのタイムラグがあるはずだ。知覚のタイムラグはどのくらいなのか。電気信号が神経を伝達する、電流と同じ早さなのか、実際にはもっと長い時間をかけて知覚していて、今のぼくたちは遠い過去を「今」だと思って生きているのかも知れない。いずれにしても、自覚した時には現実は既に通り過ぎている。ぼくたちは常に「思い出」をリアルだと思って、それが今現在であり、現実であると思っている。でも実際はすべて「思い出」と「記憶」なのだ。思い出こそ「リアル」。本当の「今」は未来の思い出。「時をかける少女」の主人公、芳山和子がラベンダーの香りでタイムリープしてしまうことが、単なるフィクションには思えなくなる。「今」とか「リアル」って何なんだろう。

本当に不思議な体験だった。これまで過ごしたことがない一日が終わる。

今度はちゃんと自費で行きます。
今回の「リバイバル」は58000円(宿泊客かクラブ会員のみ利用可能)。この料金は確かに高いけど、キャバクラやフーゾク、ギャンブルで散財するよりは、大人の男の正しいお金の使い方だと思いました。国内旅行一回分。そんなにお金持ちではないぼくも、お金を貯めて行く価値ありと判断。とにかく感動します。

NAGOMIスパ&フィットネス http://www.grandhyatttokyo.com/spa/index.htm

KERSTINFLORIAN http://www.kerstinflorianusa.com/


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