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ハイドロ・ヴィシー・スキヤキバーガー [旅/ホテル]


先日、午前中の打ち合わせを終えてから、「パークハイアット東京」のスパでリインヴィゴレイトというトリートメントを受けてきた(雑誌の取材。本当は宿泊客か会員のみ)。どんな内容なのかと言うと、スクラブで背中の角質を除去、海泥パックで背中を温め筋肉の緊張をほぐし、ハイドロ・ヴィシー・マッサージ(ベッド上で、9つのシャワーヘッドからの温水で全身のつぼを刺激しながらオイルマッサージ)で血行促進と疲労回復……というオールハンドの約60分の施術。超快適。途中、鼻が詰まり口呼吸になって、それが気になりイマイチ集中できない時間帯があったけど、それ以外はすごくリラックスできた。人の手と水の力を実感した1時間でした。

ホテル内では受付で「橋場さま、お待ちしていました」と言われ、スパの中でも「橋場さま、こちらへどうぞ」と案内され、さらにトリートメントの前にセラピストの方からも「橋場さま、向こうでお待ちしています」とか、どこに行っても名前を呼ばれて、そういうのに馴れていない自分は「ぼくはあなたを知らないのに、なんで名前知ってるの?」って、ちょっと足下が落ち着かない感じだった。最後に「橋場さま、今日のトリートメントはいかがでしたか?」って、このホテルの人たちは、ぼくがこの施設内で受けたサービスを把握しているんだな。素直じゃないぼくは少々恐縮してしまう。普通はそれで、安心した気持ちになり、ホテル内で心穏やかに過ごすことができる人が多いのだろう。「あなたのことをちゃんと気に留めていますよ」という気配を醸し続けることが重要なのだと思った。でも「○○様」と呼ばれ馴れていない人には気恥ずかしかったり、放っておいてくれと思う人もいるかも知れない。ホテルのサービスって難しいね。ホテルを選ぶ時は、客室や施設の内容で決めるのはもちろんだけど、そのホテルのサービスの考え方が自分にフィットするか否かも重要のような気がする。ぼくはホテルでは匿名の一ゲストで過ごしたいほうだ。

PARK HYATT TOKYO http://www.parkhyatttokyo.com/

ある町の駅を降りた時に駅員に「○○様、私どもの町にいらしゃいませ。どうぞお楽しみください」って言われて、どこのお店で買い物しても「○○様、ありがとうございます」って応対され、ついでに「先日、隣の定食屋で出たサンマの焼き加減はいかがでしたか?」と尋ねられ、学校帰りの子どもたちにも「○○様、こんにちは。ごきげんよう」って声を掛けられる、そんな徹底した観光地があったらスゴイね。ちょっと怖いけど。
10年くらい前に六本木にあったテーマパークみたいな高級メガ・キャバクラは、入り口で会員カードをかざすとドアが開いて入場できるんだけど、同時に客のいろんなデータが各部署のスタッフに伝わって、店内では常にフルネームに様付きで呼ばれたらしい。店内にはVRの体感ライドがあったり、スタンディングのシャンパンバーもあり、女性が隣に座っておしゃべりするだけじゃなくて、フロアを一緒に遊んで回れるようなシステムだったと思う。内装や設備にバブル景気の頃のディスコを連想させた。ぼくはオープン前に見学させてもらったのだが、同じフロアで女性の採用面接が行われていて、清楚な感じの女性が並んで姿勢良く座っていて、こちらが気になってしょうがなかった。ぼくの通り一遍の知識のキャバクラ勤めの女性とは真逆の雰囲気だったので(これが高級店の真実なのだろうか)。「オープンしたらぜひいらしてください」とチケットをいただいて、いつか行こうと思っている間に閉店になっていた。初期投資が大き過ぎだよ。どう考えても。


スパのトリートメントを終えてからそれからスパゾーンでサウナに入り、次の仕事に向かう前に遅めの昼食。パークタワー1階のデリカテッセンでハンバーガーを食べる。ハンバーガーってパンとサラダと前菜とメインディッシュを一気に食べる食べ物だ。いろんなモノを一度に食べると味や食感が混ざって、一つ一つでは美味しいものも、どうでも良い味になってしまいような気がする。ハンバーガーって、そのギリギリじゃないかと思う。昔、和風ハンバーガーブームの頃、ロッテリアで「スキヤキバーガー」って新製品が売り出されて、恐いもの見たさで食べたことがあった。これは信じられないくらいマズかった。スキヤキのたれにマヨネーズ、レタス、シラタキまで入っている。担当者はどういうセンスでつくったんだ。このままではサバ味噌バーガーとか天ぷらバーガーとか出ちゃうんじゃないかと思ったけど、そんなエッジは越えずにブームは終焉。自分の中にも、余計なことを考えすぎないほうが良いという教訓が残る。ハンバーガーは、ゴマ付きバンズ、ハンバーグとチーズとピクルス、トマト、ローストオニオンで、それなりに完成しているのだと思う。一気に食べ終えてコーヒーを飲み新宿駅に向かう。

新宿駅西口に着くと深い西日が地下通路まで伸びていた。今日は夕焼けがきれいだろうな。ぼくが前に暮らしていた西新宿のアパートの部屋は9階で、大きな開口部は新宿中央公園と都庁側(東側)に面していた。夕焼けがキレイな日は、強い西日が東京都庁のファサードに反射して、部屋の都庁側の窓からシルバーとオレンジが混ざった夕陽のリクレクションが差し込んで、グラデーションのない均一な光が室内を満たした。まるで床壁天井が発光しているみたいだ。ぼくはこの20世紀のSF映画のセットみたいな光が好きだった。


「ホテルオークラ東京」のエントランスに約20年立ち続けている案内係の方がいる。渡邊光孝さんだ。オークラではドアマンをアッシャーと呼ぶ。この渡邊さんはまさにプロフェッショナルなアッシャーだ。彼はホテルの顧客2000人以上の名前を覚えていて顔が一致している。クルマで来る客だったら、車種と運転手も知っている。スーツの会社のバッチを見るとほとんどの社名が分かる……。ぼくはずいぶん前に渡邊さんにご自身の仕事についてお話をうかがったことがあり、彼が語る自分の仕事への誇りとか、仕事に対する考え方、お客さまに対する考え方に深く感銘を受けたことがある。当時の渡邊さんは、たぶん今のぼくと同じくらいの年齢だったはずだ。アッシャーの仕事にプライドを持っていて、アッシャーとして玄関でホテルマン生活を終えたいと言っていた。話の最後に「自分は田舎育ちなので、地方から来た、ホテルに馴れていないお年寄りが玄関で心細そうにしているのを見ると、いても立ってもいられなくなる」と話してくれたことを思い出す。都内の某ホテルのエントランスは、黒塗りのハイヤーが優先でタクシーの客は後回しにしている。ぼくは実際にそれを体験したことがある。でもオークラは、ハイヤーもタクシーも政治家も田舎のお婆ちゃんも、エントランスでは順番通りに基本的に等しくお迎えするのだそうだ。渡邊さんを始めとするアッシャーの方々の、温かくて毅然とした姿勢が、ぼくのオークラの印象のすべてだ。エントランスでの第一印象が良くないと、ホテルに対する心証も悪くなるかも知れない。エントランスというのは本当に大事なんだ。オークラが一流と言われる理由がよく分かる。何年か前に仕事でオークラに立ち寄った際に、ドアの前で渡邊さんに声を掛けていただき驚いたことがある。

「キャピトル東急」の地下にある理容室「村儀理容室」で、先日うかがった話もとても面白かった。ホテルには伝説のプロフェッショナルがたくさんいる。こういう方々の話をまとめると、良い読み物ができると思った。「キャピトル東急」が「東京ヒルトンホテル」として開業したのは1963年。残念ながら今年2006年の11月で営業を終え、再開発プロジェクトが始まる。年に2〜3回くらいしか行かなかったけど、赤坂の神社の杜に囲まれた静けさと、ロビーに漂う品格が好きだった。開業当初の客室の内装は渡辺力さんの仕事だ。再開発プロエジェクトには森ビルの社名がある。どうか下品な再開発だけはカンベンしてほしい。

東京ヒルトンホテル物語

東京ヒルトンホテル物語

  • 作者: 富田 昭次
  • 出版社/メーカー: オータパブリケイションズ
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: 単行本


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