寒い日が続いています。芝生が白く見えるのは霜のせい。
ドイツに来てから朝食にパンを食べることが多くなった。パンと一緒に食べるのはハムとチーズ、それと野菜か果物、ミルクコーヒー。簡単で洗い物も少なくてなかなか合理的。朝食で食べる食材はBIOのお店やスーパーのBIOコーナーで買うことが多い。BIOというのはオーガニック食品などの総称。ぼくはオーガニックファシストではないから、有機以外は食べないというわけではなくて、何でもあまり気にせずに食べるほうだ。でも朝食べるものは気分的にBIOの表示があるモノを買ってしまう。街にはBIOのディスカウントストアもあって、スーパーマーケットで買うのとそんなに違わないし(もちろん激安スーパーのモノとは比べられない。でも激安店でもBIO製品は扱っている)、お店はたいてい空いていて、チーズやハムは気軽に量り売りしてもらえるので重宝している。普通のスーパーでもチーズとハムの量り売りはあるけど、混んでいるのでドイツ語が苦手だと列に並びづらい。そして、何よりBIOの食材はおいしいと思うことが多い。特に肉製品や果物。それにパンもうまい。リーズナブルで安全でおいしければ言うことはないので、調理せずそのまま食べるハムなどの加工品や乳製品、生野菜は自然とBIOのスーパーで買うようになったわけだ。
これがオーガニック製品認証ラベルBIO-siegel
日本人には有機野菜は高くて当たり前という意識があると思う。ただ、生産者から直接買えば,農協や仲介業者がない分安くて、普通に買うより安いこともあるそうだ。東京では等々力の大平農園が有名で、この農園についての読み物をドキュメンタリストの瀬戸山玄さんが、以前、雑誌「LIVING DESIGN」で連載していて、ぼくが編集を担当していた。でも日本では、信頼できる農家から購入するならともかく、日本のスーパーマーケットの有機表示はあまりあてにならないという話を聞いたこともある。一方、ドイツのBIOマーク BIO-siegelは連邦消費者保護・食糧・農業省大臣が認定するもので、一企業がPOPやパッケージに表示するのとは重みが違う。それにドイツは世界で五本の指に入る農産物輸出大国なので、表示に何か問題があると国際問題になってしまうのだ。逆にBIOがドイツ農業生産品の競争力を高めているとも言えるだろう。ドイツの有機農法はルドルフ・シュタイナーの人智学の考え方から始まったとされている。シュタイナー思想がここまで一般の暮らしに根付いているとは、ドイツに来るまでは分からなかった。
「神よ、私に太陽と雨、そして豊富なプランを与えたまえ」とは、南ドイツの農家の典型的な朝の祈りの言葉だ。農業とは本当にクリエイティブな仕事だと思う。
ドイツのBIO製品の規格は1991年のEU法2092に基づいている(2000年には畜産物の基準も発効)。この法律はEU内のオーガニック農産物の「生産」「加工」「輸入」「検査」について法律基準を設け、それを満たしていないモノをオーガニックと表示、販売することを禁止、違反者には罰則規定がある。ドイツは、まずこのEU基準をクリアして、品目によってはさらに厳しい基準を設定していると言う。例えば農業事業者の生産物で一部はBIOだが、他の品目はオーガニックではないということは許されず、生産者はすべてオーガニックに転換しなければならない……など、なかなか厳しい。
BIOのショップで売られているのは食品だけではない。酒などの嗜好品、化粧品やトイレタリー、キッチンや洗濯洗剤、エッセンシャルオイル、一部は衣料品まで扱っている。化粧品やトイレタリーはケミカル入りで当たり前だと思っていたけど、ドイツではBIOマーク付きのものが一般のスーパーでも売っていて、その数は思った以上に多くて価格もさまざま、選択肢も広い。たいていWELEDAやDr.Hauschka、laveraなど、日本でもおなじみの化粧品がメインの棚に並んでいる。
化粧品には食品とは別のBDHI(ドイツ医薬品化粧品商工業企業連盟)の認証基準がある。こちらの基準は原材料が天然素材であることはもちろん、生産会社の環境保護や動物実験の有無に至るまで、厳しい基準が設けられているそうだ。実際にDr.Hauschkaのハンドクリームを使った使用感と効果は男女問わずに感動モノだと思う。バラの花40本が入っていると言うローズデイクリームはさらにスゴイらしいが、さすがにこのアイテムは男には買いづらい雰囲気がある。それにこれは高い。普通のDr.Hauschkaのハンドクリーム50mlが7.5ユーロ(約1000円)で、小さな試供品サイズ(5ml?)なら1ユーロ。laveraならもっと安い。確かにさらに安いものはいくらでもあるから、BIOやBDHIはやっぱり一部の富裕層が愛用するものだとは思う。2001年のBIO食品の売上高は食品総計の約3%に過ぎない。とはいえ日本のオーガニック製品の価格を考えると、それでもずいぶん庶民的だ。表参道のクレヨンハウスやナチュラスハウスで野菜を買うような、スノッブさに気恥ずかしい思いをすることもない。そういうわけで最近ぼくがドイツから日本に送るギフトは、だいたいDr.Hauschka製品に決めている。日本でも買えるけど、ぼくにとってドイツらしい良品というのは、ヘンケルでもアイグナーでもなくてDr.Hauschkaだと思うからだ。
この本が気になる。ちなみに著者は1976年生まれ。シュタイナー思想とナチについても。
この本は面白かった。「健康」であることを国家に強制される世界。今の日本も同じだけど。ドイツ有機農法の一側面を見ることができる。
健康帝国ナチス
- 作者: ロバート・N. プロクター
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2003/09
- メディア: 単行本