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明かりを消してキャンドルを使えば省エネか? [生活雑感]

またしばらく更新できませんでした。
最近は南ドイツもかなり暑くて、ここ数日は夕方にはスコールのような雷雨の天気が続いている。夏はこんな天候が多いらしい。特に24日深夜の雷はすごく激しくて、暗闇の中にお城が雷光に照らし出され、雷とゴシックホラー好きのぼくにとってはなかなかの絶景だった。ドイツに来る前、西新宿に住んでいた頃、雷の気配がするとぼくは徒歩数分の新宿パークタワーという超高層ビルの最上階に近いフロアまで上った。そこは「パークハイアット東京」という豪華のホテルのカフェラウンジ「ピークラウンジ」になっている。そして、夏は冷たい白ワインとワインに付いてくるピーせんのおつまみを食べながら、西新宿の高層ビル街の雷風景を楽しんでいた。雪の朝も嬉々として「ピークラウンジ」に通った。コーヒーもワインも安くはないけど、高層ビルから雷や雪の光景を楽しめると思えば、それためだけにお金を払ってもいいと思っていたので。

雷もそうだけど、動いたり点滅したりする光には、人の感覚を惑わす不思議な力があると思う。昔、東京・飯倉にあった「ENDMAX」という短命のナイトクラブにはウィリアム・バロウズ作のドリームマシーンなる光源が回転する筒状の照明エフェクトが備えられていて、その下に立つと確かに足下が危うくなるような変な気分になった(気がした)。芝浦「GOLD」のパーティー「エコナイト」(環境に配慮しましょうのエコではない)では、内側で光が明滅するゴーグル形の装着器具シンクロエナジャイザというちょっと怪しげなデバイスが用意されることがあり、それを着けて大音響の中にしばらく佇んでいると、これまた不思議な感覚がやってきて幻覚が見えた気分になったものだ。そんな時代の雰囲気だったんだな。いずれも当時日大講師だったメディア美学者の武邑光裕氏が関わっていた。「GOLD」の4階の音響設備は、フルボリュームにすると死人が出ると言われたくらいパワフルなもので、日によっては本当にギリギリのボリュームで営業していたらしく、強烈な音だけで幻覚が見えていたのかも知れない。町外れの倉庫一軒まるごと借り切った「GOLD」では、誰に遠慮することなく、光も音も未曾有のパワーを追求していた(照明器具も飛行場で使われるキセノンライトだった)。たまにしか出かけなかったけど懐かしい。

光ついでに書くと、先日YAHOOのニュースのページから「100万人のキャンドルナイト」というウェブサイトに辿り着き、記事をぼんやり眺めていた。趣旨としては、明かりを消してエネルギーセーブということだと思うけど、ここでも「スローナイト」というナゾの造語がキャッチに使われている。それはあえてスルーするとして、「明かりを消して地球環境に配慮」という「場の空気」には少し気になった。何より「地球環境に配慮して」というスローガンには、今や誰も異を唱えにくい雰囲気がある。だけど、偏屈なぼくには、それだけにさまざまな思惑が潜んでいるように思われるのだ。でも、これも話が長くなりそうなのでこれまたスルーするとして、そもそも「明かり」を消すだけでそんなに環境に良いのかということ。電力を使うもので目に見えて分かりやすいのは「明かり」なので、照明は省エネの槍玉に挙がりやすい。でも実際には照明はとても効率良く電気を使っている器具の一つで、総電力消費のほんの一部に過ぎない。もっともっと電力を浪費している器具はたくさんあるはず。確かに衛星から撮影した夜景の写真を見ると、東京は光に溢れていて豪快に電気を使っている観がある。でもこれは空に漏れている(つまり何も照らしていない)意味のない光が多いということで、必要なのは照明のコントロール。建物のライトアップは、その建物の光らせるべき部分に狙いを定めてしっかり照らせば、空に漏れる無駄な光は抑えられる。夜、光で浮かび上がる名建築からは、太陽の下で見る時とは違う多様な表情が窺える。建築物のライトアップは女性のメイクアップに近いと思う。ライトアップには防犯や防火の意味合いもある。だから照明デザイナーたちが腐心して本当に上手に制御したライトアップまで消灯して「地球環境云々」というのは、個人的には腑に落ちないものがある。明かりを消せばその分は省エネになるのは間違いないので、無駄な照明は消したほうが良い。ただ、無駄じゃないものまで消すことはない。「地球に優しいスローナイト」の生け贄にされる「照明」を不憫に思う。とは言え、キャンドルの明かりも確かに心地よい。でも、電気照明の代わりにキャンドルを使う場合は、キャンドルの扱いに馴れていない人が多いと思うから本当に気をつけてほしい。日本家屋は火に弱いし、アロマキャンドルで火事になる例も多いようなので。

ヨーロッパは白熱灯で日本は蛍光灯、で、蛍光灯好きの日本のほうが照明文化は遅れていると思われがちだが、ヨーロッパも数年前から蛍光灯(省エネライトと呼ばれている)に取り替えるキャンペーンが続いていて、公共機関のほとんどは電球(ボール)形蛍光灯に切り替えられているようだ。でも本来、蛍光灯でいちばん効率が良いのは棒状の直管蛍光灯のはず。これだと一本のライトで広い面積を照らすことができるからだ。それをわざわざ丸めて電球形にするなんてもったいないと思う(これは日本人的な考え方なのかも)。日本人の暮らしと蛍光灯について昔、「ILR(International Lighting Review)」というオランダの雑誌の編集長J.F.カミナダ氏 J.F. Caminadaに話を聞いたことがある。「ILR」は事実上、世界最大の電球メーカー、フィリップス・ライティングの雑誌。最近見かけないので休刊中かも知れない。カミナダ氏の話は面白くて、日本人が蛍光灯を使う理由は、蛍光灯のほうが高効率という理由以外に、日本人は平面的な照明に馴染みがあるからだろうと言っていた。ヨーロッパの人々はキャンドルなどを室内にたくさん置いて明かりを採る「点」照明の集積に馴染みがある。その点(=キャンドル)が電球の点に置き換わった。それに対して日本は和紙に乱反射して拡散する光で明かりを採る「面」照明の文化。だから日本人には直管蛍光灯のような平面的な照明を扱うのは容易いけど、逆にヨーロッパの人々はそれをどう使って良いものか分からないのだと話してくれた。さらに、蛍光灯の白い光を好むのは照明文化レベルが低いのか、について。フィラメントが発熱する電球の光と、管内で放電する蛍光灯では光の質も違う。どちらを好むかは地域の緯度(つまり太陽)と関係があるとカミナダ氏は言う。一般に高緯度は色温度(単位はK=ケルビン)が低い赤めの光(電球の光)を好み、白い光(放電ランプ)は好まれないらしい。しかし同じヨーロッパ内でも南のほうは、白い光、つまり色温度が高い照明も多用されていることが、ヨーロッパ内での電球/蛍光灯などの売り上げから読み取れると言うのだ。日本はかなり低緯度で南に位置しているので蛍光灯のような白い光を好むのはむしろ自然で、電球色の照明器具を使っているから上質なインテリアで、民度が高いという短絡的な考え方はしないほうが良いということだった。なるほど。もっとも「IRL」の事実上のオーナーであるオランダのフィリップスは蛍光灯のトップメーカーなので、蛍光灯に対して好意的なのは当然という意地悪な読み方もできる。それに温暖化で海面水位が上がると困るのはツバル諸島だけではなく、海抜0メートルのオランダもかなり危なそうなので、世界中で電球より消費電力の低い蛍光灯をもっと使ってもらわないと……。いずれにしても蛍光灯を使っているから生活文化度が低いみたいな考え方は見当違いというわけ。蛍光灯は消費電力が少なくて長寿命。今は電球風の色温度の低い蛍光灯もある。明かりを消してキャンドルを使うより、東京中の電球を電球色蛍光灯に付け替えるほうが、よっぽど環境には良いはずだ。それに、部屋でキャンドルをたくさん灯したら暑くなって、それで冷房を強くするのでは「スローナイト」には逆効果であることも忘れずに。

ガールフレンドが来てから外食が多いので、食事の写真を撮る機会が減った。彼女が滞在する期間は限られているので、外で南ドイツらしい食事をするのも異文化理解の一つだ。ぼくも便乗して楽しんでいる次第。カロリンとそのうち自分たちが撮った写真でスライドショーをやろうと話をしていたので、これまでのデジカメ写真を整理していたら、ドイツに来てもう半年が過ぎたことに気がついた。最初の頃の写真は雪風景。ドイツに来たばかりだったから目に飛び込む物珍しい景色は何でも撮っていた。だから枚数も多い。写真の中の冬のソリチュードはなんだか孤独で寂しい。写真を見るとその時の気持ちを思い出す。
何でもかんでもすぐに答えが分かったり、気持ちが簡単に伝わってコミュニケーションがうまくいくことが理想だと信じていた頃もあった。今は、気持ちはなかなか伝わらないほうが良いと思うし、答えは簡単に出ないほうが良いと思う。イタリアの小説家アルベルト・モラヴィアの短編集に、世の中のすべてが見える(感じられる)ようになる男の話があった。そうなると、妻の浮気も隣の子どもの悪戯も向いの夫婦の喧嘩も、何から何まですべて同列に見えてしまい、妻の浮気がどうでも良い事の一つになってしまうという終わり方だったはずだ。高橋和己の「邪宗門」の中に登場する宗教家は、神は差別なくすべての人を愛し救うというが、差別があるから愛は尊いのだという逆説を展開していた。世界は広くて、知らない道がたくさんあることを知ることが豊かだと思う。冬、春と過ごし、ぼくはドイツに来て三つ目の季節を迎えている。書きたいことは山ほどあるが、もう少し時間をおいてから書こうと思う。初めての海外生活は、知らない街で辛いこともあったけど、その分豊かで、ぼくにとって掛け替えのないものでした。

ミラノの阿部雅世さんがベルリンに移り住むらしい。ベルリンの大学の教授になるからだ。阿部さんが、5年前にぼくが「LIVING DESIGN」に書いたナポリ特集の巻頭文を英訳してくれたものを送ってくれた。

"Information-technology" is such a topic of today and the quick, easy and
much communication is believed as an ideal of the human society.
? but is it true ?

Japan Air Line, which departed Tokyo Nalita airport at noon, arrived at
Milano Malpensa Airport in the twilight after a day long flight. When we
made a transit to the domestic flight to Napoli, Japanese passengers were
reduced into the number I can count on my fingers.

The last dew of the sun light was dropped off, the small aircraft of
Alitalia continued its night flight to the south into the stars. Soon after
the announcement of crossing over Rome, the dark Mediterranean sea and the
infinite shine of the lights which flame the sea appeared in my small window
of MD8. The galaxy on the earth. The city of hope and life in the book "
Wondering minstrel ".

Father, My Father. That’s Napoli.

The very person who I cannot understand is myself. The life is in the
fullness of mysteries. I don’t have any words with me to describe it. But,
because I cannot understand it, because I cannot communicate it, that’s
why, I believe that there lies the true life of myself, of people, of city,
of art and of love. The true life lies only on the undescribable dream,
beyond man’s understanding. Then in Napoli, we discover that man cannot
superior one’s life.

Goethe wrote; See Napoli and Die.

Within a minute we will arrive the Napoli international airport.
Welcome to the city of Sun and Life.

阿部さんありがとう。ナポリ特集は「LIVING DESIGN」でいちばん好きな仕事でした。


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Frauわだみ

先日はコメントありがとうございました!ここんとこ、ホントに暑かったですね。今日はLudwigsburgというところのお城で花火大会がありました。と言っても、20分ばかりの小さなモノですが。。。
私のブログに(多分)橋場さんのと間違えられて?コメントを寄せられた方がいらっしゃいましたので、念のため転送しておきます。
------------
橋場さん、ご無沙汰してます。
2月末の時はどーもありがとうございました。・・・(途中略) by 渋谷康人
by Frauわだみ (2005-07-03 08:06) 

akane

実家の福岡は雨が降らず、断水になるかもと騒いでいたら、雨が続く毎日でした。
おかげで、今は蒸し暑さだけが残っています。
カエルさんだけはご機嫌で鳴いております。
本格的に忙しくなりそうで、次にここに遊びに来るのが、先になりそうです。
でも、読み溜めが出来るので、楽しみだったり。
お体にきを付けてくださいね。

話は飛びますが、ドイツに来て半年、痩せましたか?太りましたか?
by akane (2005-07-07 17:38) 

つかもとたろう

阿部さんベルリンに引っ越し?ですか。教授だなんてすてき。
こちらはゲーテ終わりました。一応。
落第です……
知人が、地球の歩き方の中欧担当で、ドイツ語が
できるので、聞いてみたら「そんなもんだ!」とのお返事が。
会話中心の方がいいみたいですね。やっぱり。もっと話せるように
なりたいなら、現地に住め!とも言われました。
まぁ、ひさしぶりの学校みたいで楽しかったので、それだけでも
よかったかなぁ〜
橋場さんのドイツ語は?相変わらず進展なしですか??
by つかもとたろう (2005-07-23 15:56) 

hsba

Frauわだみさん、メッセージ転送ありがとうございます。渋谷さんのコメントは彼の勘違いですね。確かに今年の2月に仕事でシュツットガルトに来られた際、市内でお会いしました。 ベンツとポルシェのミュージアムの取材でした。そういえば、その後、ぼくもシュツットガルトの朝市に買い物に出かけています。今はアプリコットがおいしいですね。先日は日本人会の夏祭りにも行きましたよ。

akaneは大阪に帰ってみたいだなー。カエルの鳴き声が懐かしい?

つかもとさん、ドイツ語は今は自力で勉強中です。しかし進展なし。空しい……。数字と挨拶とレストランやカフェでの注文はなんとかできるけど、それ以外はまったくダメです。8月にまたベルリンに行きます。
by hsba (2005-07-29 11:20) 

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