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ヒゲ、くちびる、アロマオイル、鏡 [買い物/お店]

北京オリンピックがもう始まっていたなんて知りませんでした。

Esquire日本版に連載しているグルーミングのコラムのバックナンバー01です。古いコラムの原稿はPCが壊れた時に一緒に消えてしまったのでした。今年の1月号から掲載されたものだけが残っています。最新版は「Esquire日本版」で。リンクはアフィリエイトではありません。


《ジョージ・ルーカスのSFXとヒゲ》

埼玉県川越市にヒゲデザインのカリスマがいる。「理容室FUJII」の藤井実氏だ。藤井氏のヒゲ技を求め、都内はもちろん、湘南方面からも顧客が通ってくる。
戦国時代にヒゲは武将の権力や強さの象徴だった。貞享元禄になると、町民にもヒゲが大流行し、やがて幕府より老人以外はヒゲを禁止する禁令が発効される。再びヒゲが復活するのは明治期。「戦後もヒゲは風格や威厳の象徴でしたが、高度成長期にヒゲを禁ずる企業が増え、ヒゲ文化は途絶えてしまった。そして現在、組織型から成果主義、個人主義に社会が移行する中、ヒゲを生やす社会人が増えてきた。女性が男性のヒゲを認める時代になったことも大きいですね。現代は戦国時代とも明治とも違うヒゲ文化が生まれたと言えます」。

藤井氏はジョージ・ルーカスのヒゲを見てヒゲデザインの可能性に気づいた。
「太ってしまい顔と首の境がないジョージ・ルーカスは、ヒゲで“顔”の輪郭をつくっている。あれこそSFX」。以後、ヒゲの形と顔の見え方の変化を研究し、自らヒゲデザインの基本フォームとラインをつくりあげた。そのチャートを使い、ヒゲで顔の印象がどう変わるかをコンサルティングしてくれる。「間違えたヒゲの人が多いんですよ。鏡と向き合いヒゲの手入れをすると、正面からのヒゲしか見えない。実際、人の顔は立体で、人と正対するケースがそんなに多くない。だからプロはヒゲで横顔をつくるんです。あるいはヒゲで顔の軸や顎のラインをつくる。輪郭補正ができるんです。女性の化粧に近いと思いますね」。

「濃さの上限は眉毛以下が鉄則。私が手掛けるヒゲは、会社に行けるヒゲが目標です。一度デザインラインをしっかり決めたら、後は自分で手入れすることもできます。ヒゲは男性だけに与えられた楽しみ。顔の印象を変えることもできるし、行動的になる人もいる」。都内からわざわざ川越に足を運ぶヒゲ愛好家がいることに納得だ。


《唇には人格が宿るという説も》

カナダの解剖学者のワイルダー・ペンフィールドが描く“ペンフィールドのホムンクルス”の図をご存じだろうか。身体部位に占める大脳の比率の大きさに応じて、生物の姿を再構築したもので、ヒトの場合は手と顔が異常に肥大した姿で描かれる。生物によってホムンクルスの姿は、生体感覚の差で異なるのだが、ヒトの場合は大脳感覚野における手と顔の感覚的な重要性がひときわ高いことを意味している。その顔の中で特に目立つのは、ディフォルメされたいかりや長介の似顔絵のような巨大な唇だ。
ヒト以外のほ乳類は、顔は常に進行方向の先端にあり、その最先端の口には、未知の環境を探索するためのヒゲが生えている。人間の唇とその周辺の生体感覚が大きいのは、その名残と考えられる。唇は人体においてかくもデリケートで敏感な器官であるにも関わらず、他の皮膚に比べて角質層が薄く、環境に対しては無防備な状態にあると言える。また皮脂が分泌されないため、水分が蒸発しやすく、冬のエアコン暖房の風に晒される室内では特に乾燥しやすい。乾燥が進むとひび割れたり、皮がむけて血がにじむこともある。気になって手で触る物理的な刺激も唇の荒れを酷くする原因になる。生体感覚が大きな部分ゆえ、その違和感は無意識のうちにストレスになっているとも考えられる。唇のケアは精神的にも見過ごせない。また、口は顔の中でいちばん動く器官であり、人相学的には人格が宿ると言われる部分でもある。実は、顔の中で意外に印象に残りやすい個所でもある。

人工的な乾燥から唇を守るには、保湿成分とオイルで乾燥を防ぐリップバームが有効だ。リップバームのほとんどは携帯サイズになっているが、これにも意味がある。こまめに使うことが唇を健康的に保つ秘訣だからだ。唇は他の皮膚と比べて新陳代謝が早いので、まめなケアが健康的な唇をキープすることにつながる。一般的なリップスティックタイプは衛生的で使いやすい。これを人前で使うのは抵抗がある人には、チューブやミニジャーに入ったクリームタイプもある。頻繁に使うことが重要だが、一度に使いすぎてテカテカさせないように。

レン.jpgREN
潤いを与えるアカシアハニーと、疲れた唇を保護するトウキンセッカエキス、ローズヒップシードオイルを配合。「リップバーム アカシアハニー」¥1,575

アグロナ.jpgAgronatura
有機栽培の花から自社飼育ミツバチが採集した蜂蜜・蜜ロウにハーブをブレンド。「アントス リップクリーム レモン」(ミントもある)¥1,260

アヴェダ.jpgAVEDA
保湿効果がある天然ワックスと、シナモンリーフ、クローブ、アニスオイルのアロマが唇をリフレッシュ。SPF15。「リップ セーバー 15」¥1,575

モルトン.jpgMOLTON BROWN
英国王室御用達。天然ビタミンE、ハチミツ、ビーズワックスを配合したチューブタイプのリップクリーム。「リップセイバー メン」」¥3,150


《多忙なビジネスマンにこそアロマの力を》

理由もなくカレーやドーナツを食べたい時は、私たちの体がクミンやシナモンの芳香を求めているのかも知れない。私たちは無意識のうち、自分が求める香りを体に採り込んでいる。香りは人が理性で抑制している感情や本能に働きかけると言われている。中世からの精油を使う民間療法が、アロマセラピーとして改めて研究されたのは20世紀始めのことだ。英国はその先駆国の一つ。同国のフレグランスアース社は、有機栽培か野生植物から精製される高品質アロマオイルで知られている。80年代、世界のコレクションを飛び回っていた英国人モデル、アナスタージア・アレキサンダーが精油の効果に感動したことが契機となり「アロマセラピューティクス」というアロマオイルのトップブランドが生まれた。現在はサッカーのイングランド代表や、英国航空ファーストクラス、各国の高級ホテルでも使われている。

その「アロマセラピューティクス」のデイスパが東京にもある。アロマセラピューティクスのブレンドオイルを使ったトリートメントも人気だが、ここではアロマオイルの力をより実感できるホリスティックアロマトリートメントをお勧めしたい。英国フレスラントスタディーズ・インターナショナル公認トレーナーの指導を受けたアロマセラピストが、フレグランスアースの500種類以上の精油から、今の自分の心を体の状態に合わせブレンドしたオイルを使い、オーダーメイドの施術プログラムを作成。コンサルテーションを終えてベッドに横たわり、ブレンド精油の香りを大きく吸い込んでから、心地良いハンドトリートメントが始まる。施術時間は60分か2時間。あまりの気持よさに早々に眠りに落ちてしまうだろう。精油は、香りとしてだけでなく、肌からも体に深く採り込まれていく。終了後は体の気怠さは残るが、気分は突き抜けるようにクリア。香りの効果が体全体で分かる感じだ。施術後の発汗、トイレの近さは体内の老廃物排出が活性化している証拠なので驚かないように。トリートメントの前後に、ロンネフェルトのオーガニックハーブティーが提供されるのも嬉しい。

bath_photo01.jpgアロマセラピューティクス スパ
東京都港区南青山6-6-20 K's南青山ビル2階 tel. 03-5766-6114
12:00~21:00(土日祝~20:00) 月休


《シェービングミラーの近接空間学》

ビジネス用テレビ会議のシステムは、70年代半ばにはホテルの会議室などでのサービスが始まっていた。画面の中の遠隔地の人物とミーティングを行う際の、モニター上に映し出される顔の大きさやディスプレイとカメラの位置は、当時から考えられていた。特に、画面の人物との自然な視線一致は、テレビ会議以前のテレビ電話開発の時からのテーマだったと言う。
それではどれくらいの距離で画面に向かい合うのが適当なのか。ここでは、人類学者のエドワード T. ホールが1959年に発表したプロクセミックス(近接空間学)が参考にされていた。プロクセミックスは他者との距離感を、密接、個体、社会、公衆の4つに分けて考察したもので、人はさまざまな相手、状況に応じた適度なスケール(縄張り)があることを導き出している。例えば密接距離(45㎝以下)に恋人や家族以外が入り込むのを嫌がり、侵入者とは視線を合わせないよういする。逆に社会距離(1.2~3.6m)では視線を合わせて向かい合う。日常のビジネスでの対面は、この社会距離とされている。鏡に向かい、約60㎝離れて自分の顔を見る距離感だ。相手は意外に近くで自分を見ていることが分かると思う。ビジネスシーンではこの距離感での印象を整えることが求められる。見た目も含めてプレゼンテーションであることを考えると、的確な距離で鏡に向かい合い、日々、顔色や身だしなみはチェックしたほうが良い。

見た目に頓着しないことをダンディズムとし、男子が鏡を見ることを揶揄する者もいるが、グルーミングが紳士の生活文化として息づく英国では、バスルームミラーは大人の男の調度品でもある。テレンス・コンラン卿が手掛ける「ザ・コンランショップ」に、グルーミングアイテムが充実しているのもその証左だろう。もちろんバスルームミラーも、スタンド型からホテル仕様のブラケット型まで豊富に揃っている。しかしながら、人との距離感で、ビジネスシーンだけを考えるのは野暮なこと。密接距離で他者と接する機会がある者は、さらに近距離で剃り残しや肌のキメのチェックを。シェービングミラーの裏面が拡大鏡である理由は、密接距離での“会議”のためだ。



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