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またコピー商品の話 [デザイン/建築]

ベイスターズがまた負けていた。しかも連敗。

一つ前の記事で「和田屋家具店」がパチモン番長だと書いたけど、楽天のほかの家具屋を見たら、どこも似たり寄ったりだった。パチモン番長は「和田屋家具店」だけじゃなかったので、一つのお店だけを一方的に非難してしまい申し訳ない。例えば「植草貞夫のオンラインショップ」で売っているデザイナーズ家具も中国製が多かった。同じサイト内では高価な時計も扱っているのだが、この家具のラインアップを見るとロレックスもレプリカなのではないかと心配にならないだろうか。http://www.rakuten.ne.jp/gold/uekusa/
「ドイモイ」というショップも。http://store.yahoo.co.jp/doimoi/designes.html
他にも同じようなサイトはたくさんある。いわゆるデザイナーズ家具の中国産レプリカを扱っているショップの説明を読むと、アメリカのホワイト・ファニチャー・インダストリーが中国で生産しているというものが多い。中国製のほうがオリジナルより品質が良いので扱っていると謳っているサイトもある。ホワイト・ファニチャーというのは、デザインのパテントが切れた名作家具を安価に提供しているニューヨークにある家具会社だそうだ。この会社のウェブサイトのキャッシュを開くと、こんな文字しか出てこない。
White Furniture`s products are not manufactured by, sponsored by, affiliated with, or associated with Herman Miller, Charles or Ray Eames , Knoll, Fritz Hansen or other companies.

IDC大塚家具では、自社のウェブサイトで、「リプロダクションとは」として、次のような説明がある。以下抜粋して転載。

──デザイナーのオリジナルを「複製」したものは、一般的に「リプロダクション」と呼ばれています。リプロダクションは、1つの工房が製造すると、他の工房が製造できなくなるというような独占的、排他的なものでは必ずしもありません。法律上も、優れた意匠や著作物は人類共通の財産であり、長期にわたって排他的に独占すべきものではないとの考えのもと、意匠権や著作権などの法的な権利が明確になっている場合を別にすれば、リプロダクションの製作は、誰に対しても開かれたものになっています。チッペンデールやヘップルホワイトといった18世紀のデザイナーたちの作品は、時代を超えて愛され続け、現在も世界中で数多くの工房がリプロダクションを製造しています。当社で取り扱っているリプロダクションは、専門の研究機関や研究者と共同で開発したもの、独自の機関で開発したものなどがありますが、いずれも品質と価格のバランスのとれた確かな価値のある品々です。何ものにも代えがたい心の豊かさをもたらす優れたデザインだからこそ、時代を超えて愛され続けているのでしょう。(以上)

ごもっともな説話だが、チッペンデールとル・コルビュジエの家具は同列では語れないのでは。確かにグッドデザインはより多くの人々に共有されるべきだとは思う。しかし何だかやり切れないものも残る。中国の工場もおそらく「レプリカ」をつくっているという意識はなくて、注文の指示のままに製造しているのだろう。消費者にとっては選択肢の幅が広がるので良いことなのかも知れない。工業所有権なんて放棄して、みんなの手でより良くしていけば時代や環境に即したもっと上質なプロダクツができると考える人もいる。それも一理あるような気がする。日本の意匠権は15年保護されるはず。何年か前にパリ条約批准(加盟?)100周年記念のシンポジウムがあったから、パリ条約で工業所有権が認められて約100年しか経っていないことになる。しかしその100年、デザインや著作権に関わる状況は加速度的に変化した。20世紀初め、工業化の時代を迎え、建築家やデザイナーは工業所有権を得るために躍起になっていた。有名なのはカンティレバーの椅子のデザイン所有権を巡り、マルセル・ブロイヤーとマルト・シュタムが争った裁判。フリードリヒ・ミース・ファン・デア・ローエも家具をデザインすると早々に工業所有権を申請していた。著作権の考え方はこれからもどんどん変わっていくのだろうが、そのスピードに追いつけなくて、自分の中では整理がまったくできなくなってしまった。要は基本的人権と同じで、社会にちゃんとした「モラル」があれば、そんな権利はもとから要らなかったはずだ。意匠権が切れているから堂々と同じモノをつくるというのが腑に落ちないのも、「モラル」の観点で筋が通っていないと思うからだ。しかし「モラル」も人や地域や文化でさまざまだし……。

コピー商品はヨーロッパのちゃんとしたショップでもよく見かけた。「IKEA」はe15のベッドを完璧にパクっていたし、売り場には安いけどプチ偽物が多いので有名だ。e15のデザインディレクターのフィリップ・マインツァーに「IKEA」のコピーのことをどう思うかと聞いたら、「IKEAなんてそんなものだから今さら別に何とも思わないよ」と言っていた。イサムノグチのAkariの偽物はいろんなお店で売られている。MUJIのコピー商品群がスイスの有名な家具ショップチェーンで売られているのも見た。NECは会社まるごと「レプリカ」をつくられて、その偽会社から台湾の工場に発注があり、工場は正規のNEC製品をつくっていると疑わなかったそうだ。あと、ヨーロッパのビジネスマンが付けているスイス製の超高級腕時計は、かなりの高確率でデッドコピーだと思われる。かつて時計の価値は「正確さ」だった。宝飾時計を除けば、正確な時計が高価だったのだ。でも今は500円の時計も50万円の時計も正確さはほとんど変わらない。でも500円の時計も50万円以上の時計も同じ街で売られている。文字通り価値が多様化しているのだ。時計はもっとも市場が洗練された商材と言われている所以だ。こういうマーケットで「モラル」がなくなるとコピーは生まれる。しかし同じ性能の時計を100倍以上の価格で売ることも「モラル」がないと言えなくもない。

ホントによく分からない。まとまりのない話で申し訳ない。

中山信弘氏の「マルチメディアと著作権」は、訳あって、出版されてすぐに読んだ。この記事を書いてもう一度読み直してみたいと思った。福井健策氏の著書は読み物としても面白いと知人に推薦されたもの。こちらは未読。

マルチメディアと著作権

マルチメディアと著作権

  • 作者: 中山 信弘
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/01
  • メディア: 新書


著作権とは何か―文化と創造のゆくえ

著作権とは何か―文化と創造のゆくえ

  • 作者: 福井 健策
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/05
  • メディア: 新書


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コメント 2

ito

すごいですね…。
マラルンガのデッドコピーには脱力してしまいました。権利が切れているとはとても思えませんが…。
この中のショップのオーナーと話す機会がありましたが、
ゆるぎなく自信たっぷりで「なにが悪いの?」って感じでした。

確かに中国製の偽物の方が品質がいいこともあるかも知れないけど、
TECTAで見たバウハウスの真性の「オリジナル」は錆びてたけどなぁ?
by ito (2006-05-20 00:56) 

hsba

itoさん、そういえば「ドイモイ」って札幌のお店なんですね。
やってることは、カニかまを「本物のカニ」って表示して「一応、カニの精巧なレプリカです」って売るのと一緒です。クオーツのほうが正確ですからって、機械式を勝手にクオーツにしたサントス・デュモンの偽物を「工業所有権も切れてます」って店頭で売って、お客さんが喜んで買いますかね。本物の価値って錆びやすいとか不正確とか、そんなことを超えたところにあるもので、そこに「錆びにくい」からオリジナルより良いっていう土俵違いの価値観を持ち込まれても困りますよね。少なくとも、コピーを「セブンチェア」とか「マラルンガ」と表示して売るのは不当競争防止法に引っかかります。「ヤブンチェア」とか「アラルンガ」って別の名前で売っても、たぶんダメ。カッシーナやルコルビュジエ財団、イサムノグチ財団……など、コピーライトを持ってる団体にチクっちゃいましょうか。
by hsba (2006-05-23 01:12) 

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