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誕生日のゴハン/アーキグラム [食事]

少し風邪っぽいけど街まで出かけ、12月分の小切手を換金してから郵便局に行って小包と手紙を発送する。陽が出て温かくなったり急に雨が降ったり、空模様がくるくる変わる。そのおかげできれいな虹が出た。クリスマスマーケットに訪れた観光客もしばし足を止めて空を見上げている。
この日は音楽部門のフェロー、スヴェトラーナの誕生日なので、夜、いろいろ持ち寄ってカフェテリアでパーティーを開くことになっている。ぼくは日本の家庭料理をつくろうと考え、郵便局の帰りに他のフェローと待ち合わせをして、それからクルマでアジア食材店に買い物に行った。そこでレンコンといなり寿司用の味付け油揚げを買う。普通の油揚げが欲しいのだけど、これしかないのだ。その後はスーパーマーケットで大根、ニンジン、鶏肉(カモがなかった)その他を買ってスタジオに戻った。

蕎麦の乾麺がたくさんあるので、けんちん汁の蕎麦をつくる。ヴェジタリアンが多いから、鶏肉は別にして唐辛子、ミリン、味噌で軽く味付けしてからオーブンで焼き、食べる時に器に合わせるようにした。スープはごま油でレンコンとニンジンを炒めて、大根を加え、後はコトコト炊くだけ。最後に味付け油揚げを刻んで加える。さらに白ネギをみじん切りにして一味唐辛子を和えて薬味をつくる。大根が残ったのでピーラーでいんちき桂剥きをにして、塩をまぶして水を抜き、食べる時に炒りゴマ、ごま香油少々と黒こしょうを合わせる。きゅうりは薄切りににして梅塩でもみ即席漬けに。中国の豆腐をスライスして焼き、田楽味噌を塗る。さらに梅干しを叩いてマスカルポーネといっしょにチェリートマトに詰めてほぼ完成。ゴハンが炊きあがったらレトルトの穴子ちらしの素を混ぜて、酢漬けのショウガと刻み海苔、味付け油揚げを載せる。ついでにレトルトの赤飯も温めた。寿司に使ったパルマ産の白米がマズくて残念だった。これで白米と蕎麦と赤飯のストックを食べ尽くした。帰国までの食事は、新しいお米は買わず、炭水化物はパスタとパン中心にシフト。こうして少しずつ身軽になっていく。けんちん汁はまあまあおいしくできたと思うけど、みんなは「何だか珍しいモノ食った」という感じなのではないだろうか。レンコンを初めて見たという人が多かった。あと、白い大きいな根菜(大根)は何に使ったのかと聞かれる。
大根のほろ苦さにはバターとグラニュー糖(カラメル)、黒こしょうがよく合う。豚バラ、皮付きニンニク、タマネギとバターカラメル炒め煮にするのが好きだ。でも2回に一度は水っぽくなり失敗する。失敗したらそのままカレーにしてしまう。バター大根カレーはこれはこれでなかなかうまい。


スヴェトラーナは自分の誕生日にギリシャ風のチキンスープとサラダをつくって振る舞ってくれた。スープはレモンを搾ってオリーブオイルをたらして食べる。家庭料理ではなくてプロの料理人がつくったスープだった。これはかなり美味しい。このほかチェロ奏者のガブリエルがケーキを焼いた。彼は調理した肉を食べない。野菜も食べない。食べるものは果物と生の肉(魚)だけ。それで体質改善を果たして健康に暮らせているのだと言う。不思議だ。そんな彼が焼くケーキはどんなモノなのか興味深かったけど、これがまたすごく美味しくて、ドイツに来て初めて美味しいケーキを食べたような気がする。それにしてもお祝いのパーティーというのは良いものだ。スヴェトラーナはたぶん毎日ピアノを弾いている。昼夜問わず、時々ピアノの音が聞こえることがあるが、きっと彼女が練習しているのだろう。ピアノに触らないと不安になるのだろうか。

これは、前の週にデザイナーのカロリンがつくったスイスのスイーツ、ヴェルミセル。

日本の喫茶店のメニューなら「モンブラン」。イタリア・ピエモンテから国境を越えてスイスに伝わったもの。もともとはプチガトーではなくて注文されると厨房で一個ずつつくるデザートだった。カロリンのヴェルミセルは甘さは控えめなのに、しっかりコクがあっておいしかった。上質な和菓子のような味わいもあった。デコレに使ったワイン煮のフルーツやベリーもおいしい。ドイツはお店で食べるスイーツより普通の人がつくるお菓子のほうがおいしいような気がする。

近々、おさしみパーティーの予定。生で食べられる魚をフィッシュマーケットで選ばなければならない。クリスマスマーケットの屋台の中で北海産のサバを直火で塩焼きにしているお店がある。焼き魚の匂いに誘われて、中を覗いてみる。サバはなかなか立派なサイズで一匹食べるのは無理だと思い、半身を半分に折り曲げバゲットにはさんだサンドイッチを食べてみた。つまり鯖塩バーガー。意外においしい。キワモノ和風バーガーメニューで時々驚かされるロッテリア(すき焼きバーガーは超マズかった)やモスバーガーで商品化とか……お米がおいしい日本でサバにパンはありえないか。

翌日、午後からアカデミーのディレクターとの打ち合わせがあった。来年2月に行われるデザインのグループ展の企画のプレゼンテーション。ぼくは英語が苦手なのでプレゼンテーション前にはシナリオをつくってひたすらマル覚えする。サシでディレクターと話をするのは久しぶりだ。ここで写真家の林雅之さんが撮影したプロダクツの写真を紹介したいと伝え、とりあえず展覧会参加が了解された。それ以外にこの展覧会をちゃんと記録して原稿にまとめる仕事も決まった。グループ展のタイトルは“Misunderstanding Design”で、ぼくの場合はByond“Misunderstanding Design”ということになる。ここにきて、ぼくは毎月、身に余る金額のグラントを受け取っているのに、自分の原稿を書くだけでアカデミーに何の貢献できていないことが気になっていた。せっかくの機会なのでその話もしたが、そんなことはまったく気にすることはないと励まされた。ディテクターからは、ぼくがドイツで手掛けた仕事やイベント展示などで十分で、ここで何をするかではなく、ここを経験してその後で何をするかが重要だと言われる。逆に帰国後の仕事を心配されたが、それは問題ないと伝えた。

その後カフェテリアで、イギリスから来ているRCA出身のデザイン部門フェロー、ベンの仕事を見せてもらう。彼はテクノロジーと環境、自然との関係について興味深いスタディをたくさん手掛けていた。彼のデザインは「20世紀の工業デザイン」とは明らかに違う。何よりも「質量」を必要としていない。彼のデザインには理想がある。間もなく具現化するプロジェクトもある。RCAという学校が素晴らしいのだろうか。以前、東京・上原の「MDSギャラリー」で見たRCAの学生の卒業制作展も面白かった。あれはロン・アラッドが担当していた学生のより抜きだった。プロダクトデザインの、製品化=仕事(デザイナーの幸福)という図式を疑わない人は多い。でも現状はずいぶんと変わっているのではないか。ベンの仕事を見てそう感じた。彼も2月の展覧会に参加する予定なので改めて紹介できる機会があると思う。

ベンの仕事を見て、ぼくはアーキグラム Archigramのことを思い出した。森美術館での展覧会の時は既にドイツにいたので見ることはできなかった。そこで紹介されていたかどうか分からないけど、ぼくがアーキグラムで思い出すのは、1990年ローリングストーンズ初来日のツアーステージセットだ。あのステージをデザインしたジョナサン・パークとマーク・フィッシャーJonathan Park & Mark Fisherは、ぼくの記憶に間違いなければ、どちらか(両方?)はアーキグラムのメンバー(のアシスタント)だ。何より、ボーイング747で世界を巡る巨大ステージセットはまさに「ウォーキングシティ」のスピンアウトではないか。フィッシャー&パークはストーンズやU2のツアーを始め、日本では松任谷由実やMr.Childrenのステージセットもデザインしている。今は事務所が分かれているようだ。
http://www.stufish.com/
http://www.studiopark.co.uk/

アーキグラムについて、tamo11さんのWeblog
http://blog.so-net.ne.jp/cca-archi/2006-03-29

メガロステージ―驚異のロックコンサートデザイン

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  • 発売日: 1994/04
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アーキグラムの実験建築1961-1974

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コメント 2

なぜか、4つの写真の右下は空のお皿ですね・・・
料理が入ってれば良かったな~
※「けんちん汁の蕎麦」なんて、よくけんちん汁の具を買って
 頑張りましたね・・・結構種類が必要ですよね。。。
by (2005-12-08 19:28) 

hsba

食べ終わった後に「写真撮らなきゃ」って気がついたので、器は既に空っぽでした。けんちん汁も、どちらかというとけんちん風汁で、中に入れたのは大根、ニンジン、レンコン、油揚げ、鶏肉だけです。それと長ネギ。ごぼうみたいな野菜もスーパーマーケットの野菜売り場で売ってるんですが今回は止めておいた。コンニャクはさすがに売ってませんでした。あとは、干し椎茸を戻すのを忘れたり。ヴェジタリアンは魚のスープもダメなので、コーヒーメーカーを使ってとろろ昆布で出汁を採りました。蕎麦に昆布出汁というのはちょっとミスマッチな感じですが、しょう油を多めにして、みりんを加えて濃いめの味でごまかした感じです。大変だったのは材料を切りそろえることだけですね。
by hsba (2005-12-08 21:30) 

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