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チューリヒ/Frédéric Dedelley/アトリエワン [旅/ホテル]

シュツットガルトから鉄道で約3時間。スイスのチューリヒに着いた(3日前だけど)。

到着した土曜日の夜、チューリヒ在住のプロダクトデザイナーのFrédéric Dedelleyの家を訪ねた。
実は彼の名字を何とカタカナ表記したら良いのか分からない。ぼくはフレデリック・デデレィーと書いていたが、ウェブ上ではデドリー、ドドレー、デッドリーと、いろんな読み方で紹介している人がいる(ここではデデレィーのまま)。彼から自宅のパーティーのお誘いをいただき、気軽なホームパーティーのつもりで出かけたら、いきいなりシャンパングラスを手渡され、部屋にはディナー用にちゃんとテーブルがセッティングされていた。フレデリックとルームメイトのギャラリスト(名前を失念、後で調べて追加します)の二人は、この日のために、バカウマ、パンプキンスープとドイツではちょっとお目にかかれない繊細な魚料理を用意してくれていた。準備が大変だっただろうと思う。
スターターはビュンドナーフライシュ Bündnerfleisch。自然の風で1年以上かけて乾燥させてつくるスイスの山岳地方でつくられる干し肉と、青いトマトのオリーブオイル着け。干し肉を盛ったトレイは、荒く切り出した木の板に漆を厚く塗ったダイナミックな漆器。その上に秋の枯れ葉を並べ盛りつけられていた。初めて食べたビュンドナーフライシュは、牛肉の旨味が凝縮した濃厚な味だけど、ビーフジャーキーのような牛脂っぽい嫌みな感じがまったくない。手渡された爪楊枝は黒文字だった。パンプキンスープはコリアンダー入りで塩味を抑えた上品な味。魚料理はハーブで蒸した鱸と魚のスープで炊いたリゾット、それに焼きトマト。どれも本当にとても美味しかった。スイスのスペシャルデザートとして最後にテーブルに登場したのは、栗のクリームがタルトにたっぷりのった「モンブラン」だった。もちろんスイス(フランス語)では違う呼び名。フランス語の名前はミミズを連想させる語感なので「今日からぼくたちもこのデザートを“モンブラン”って呼ぶよ」。どれも本当においしかった。
この素晴らしい夕食を一緒に楽しんだのは、エディターのフランチェスカ Franziska Müller、建築ジャーナリストのロドリック Roderick Hönig。ミラノの阿部さんの紹介でフランチェスカと初めて会ったのもチューリヒだった。ちょうど4年前のことだ。その頃、彼女はインテリア雑誌のスタイリングも手掛けていた。今は二児の母でもある。ロドリックとは今日が初対面。来年の春、彼も父親になる。彼は最近、チューリヒでアトリエワンの建築家、貝島桃代さんと一緒に仕事をすることが多い。


左よりフレデリック。ルームメイトのギャラリスト、フランチェスカ、ロドリック。

貝島桃代さんは毎二週間に3日スイスを訪れて、スイス連邦工科大学(通称チューリヒ工科大学、ETH)で教えていている。つまりスイスに通って教えているわけだ。なんてタフなんだろう。ETHはスイス連邦で唯一の国立大学。当然かも知れないが、同席した誰もがアトリエワンの貝島さんと塚本由晴さんの、日本でのユニークな住宅建築の仕事をよく知っていた(著書「メイド・イン・トーキョー」なども知っていた)。貝島さんとは、ちょうど10年前、板橋区蓮根の「ワールドアパートメント」の見学会の時にぎこちない挨拶を交わしただけで、その後はお会いしていない。塚本さんとは仕事で「養老天命反転地」に出かけたことがある。年齢は公表されているから問題ないと思うけど、「ワールドアパートメント」竣工当時、貝島さんは20代の半ばという若さ。そんなに早くから仕事があったのもスゴイ。この物件のオーナーが建築家目利きだったのだ。たしか大島滋さんだ。貝島さんはその翌年にスイスに留学したと、見学会の後しばらくして、大島さんに教えていただいた。旅先で人と話をすると、忘れていたことを思い出して、その思い出がつながることが多い。それまで結びつかなかった事柄がどんどんつながっていく。


フランチェスカから素敵なカードをいただく。

フレデリックさんの家には現代美術の作品も多いけど、上質なモダン家具もたくさんある。ダイニングの椅子はブラジリアンローズウッド製と思われる北欧のヴィンテージ家具(たぶん)。真っ白なウインクチェアとイームズ夫妻のLCW、ガエタノ・ペーシェのワンオフのフラワーベースもあった。彼が暮らすアパートは100年以上前の建物で、外回りや階段に施された表現主義風の装飾が美しい。日本の建築の話をしたり、フレデリックの漆器のコレクションを見せていただいたり、とても楽しい夜だった。
ぼくはフレデリックがデザインしたプロダクツを二つ持っている。一つは昨年、彼が来日した時にお土産でいただいたもの。グラスを一輪挿しに使うためのクリップ Fleur。ロンドンのWireworksの製品だ。もう一つはイタリア・ドリアデ社 DriadeのTURCOという木製トレイ。こちらはお店でひと目惚れして購入したものだ。
彼のウェブサイト(http://www.fdedelley.ch/)を見ると、これまでの仕事を一覧できる。装飾やギミックのない、とてもクリーンでモダンなプロダクツが多い。日本人好みのデザインだと思われる。古い教会のリノベーションプロジェクトも良い。10月末まで秋葉原で開催されていた「design from Switzerland スモール&ビューティフル:スイス・デザインの現在展」(http://www.d-akihabara.jp/exhibition/sb/index.html)のカタログでも紹介記事を読むことができる。とても面白いカタログなのだが、Amazonの検索では見つからなかった。いちい書房という出版社から刊行されている。フレデリック・デデレィーのデザインは明日、改めて紹介する予定。
食事の途中、今月12日にイタリアに近いスイスの都市キャッソに開館する、マックス・フーバー Max Huberのミュージアム「m.a.x.Museo」の話になる。ぼくはこの話を東京の村岡さんというフリーエディターの方から聞いていた。残念ながら全員行けそうにない。キアッソは、ミラノとシュツットガルトを結ぶ国際特急チザルピーノ Cisalpinoがスイス国内で最後に停まる駅だ。http://www.maxmuseo.ch/index.php

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チューリヒ湖の水は透明度が高い。湖畔から見渡せる範囲では湖底がくっきりと見える。夏場は水泳や湖水浴を楽しむ人が多いそうだ。遠く地平線から、もくもくと盛り上がっている白い影は、雲だとばかり思っていたらスイスアルプス連峰のシルエットだった。チューリヒは、広大な湖と緑が多い穏やかな起伏のある地形、古くからの建物と近代建築のバランスが美しいきれいな街だった。人口は約36万人。シュツットガルトの約60万人より少ないが、ショッピング街の充実ぶりは100万都市の印象だ。ドイツに比べると物価は予想通り高くて、レストランやカフェの食事代は概ねシュツットガルトの2倍。MERCER Human Resouce Consulting が毎年発表しているCOL(Overall Cost of Living=マーサー世界生計費調査)によると、ニューヨークの物価を100とした場合、チューリヒの生活物価は112.1で、世界で9番めに物価が高い都市だ。ダントツ1位は東京の134.7、2位は大阪の121.8と日本の都市が上位を独占している(3位はロンドン、4位はモスクワ)。ドイツでもっとも高いデュッセルドルフは37位で88.4と東京の約65%。

結局、深夜までお邪魔してしまい、それからホテルに戻って、アイスクリームが溶けるように、どろんと眠ってしまう。翌朝は11時にフレデリックが迎えてきてくれることになっている。チューリヒのデザインイベントに行く予定。つづく。


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