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1958年/エゴン・アイアーマンとル・コルビュジエ [デザイン/建築]

アシスタント用の椅子で何か良いモノはないか探していた。KEVIが良いんじゃないかと思い、価格をネットで調べてみても、ぼくが昔使っていた背と座が合板のスィーベルチェアは見つからなかった。やっと見つけたのは50周年記念モデルで価格はなんと246750円だ。残念ながらこれはムリです。今、世界で使われているオフィスチェアのツインキャスターはKEVI社が発明したものだ。

KEVIが発表されたのは1958年で、デザイナーはヨルゲン・ラスムッセン。1958年はドイツの建築家エゴン・アイアーマンも、KEVIとほぼ同仕様の回転椅子を、同年、開催されたブリュッセル万国博覧会のドイツ館のためにデザインしている。現在の製品名は「Ausführung SBG 197」。価格は849,66ユーロ。写真を見る限り、この椅子はツインキャスターは採用していないみたいだ。当時のオリジナルデザイン通りに造られているのだろうか。メーカーはLINEA。日本の家具メーカーのリネアジャパンとは関係ないと思う。フォルムだけなら、個人的にはこのアイアーマンのデザインのほうがKEVIより好きだ。エゴン・アイアーマンの仕事には、成形合板の椅子や籐編みの椅子など、世界のデザインの動きとシンクロしているものが多い。インターネット時代の今より、昔のほうが同時代感や連帯感は強かったのかも知れない。

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「Ausführung SBG 197 AR」


去年、ブリュッセル万国博覧会でについて少し調べたことがあった。

1958年、ベルギーで「科学文明とヒューマニズム」をテーマに開催されたブリュッセル万博で、ル・コルビュジエがオランダ・フィリップス社の企業パビリオンを手掛けている。「フィリップス・パビリオン」はル・コルビュジエが設計した唯一の無窓建築で、人工照明だけで空間の光や色をつくり上げた非常にユニークな作品だ。鉄骨+ワイヤーとプレキャストコンクリートパネルで構成された、三次曲面の斬新なフォルム。実施設計を担当したのは、音楽家としても知られるヤニス・クセナキス。フィリップス社の当時の最新テクノロジーに触発され、当時最新鋭の照明技術を駆使した建築だったようだ。

加えて注目されたのは、内部に展示発表された音と映像の体験型ショーだった。「電子の詩」と題されたこの作品は、ル・コルビュジエ自身が制作を手掛け、フィリップ・アゴスティーニが編集協力として参加。電子音楽の先駆的存在エドガー・ヴァレーズが音楽を担当している。主にフォトモンタージュで表現された「人類の文明の歴史~戦争の脅威~新たな都市の創造」をテーマとした約8分の映像作品だ。また、上映のインターバルにはクセナキスが作曲した「コンクレPH」が流されたそうである。


「フィリップス・パビリオン」
ヤニス・クセナキスじゃなくてヤニス・ゼナキスって発音してますね。


「電子の詩」

ヤニス・クセナキス  Iannis Xenakis
1922~2001年。ルーマニア生まれのギリシャ系フランス人。第二次大戦時にフランスに亡命、ル・コルビュジエの下で働く一方、メシアンに師事し、のちに作曲家として活躍する。1958年の「フィリップス・パビリオン」では設計を担当し、プレリュードとして流す「コンクレPH」も作曲した。「ラトゥーレットの修道院」なども担当した。音楽作品に「メタスタシス」(1954)「ノモス・ガンマ」(1968)「響・花・間」(1970)「エレクトロン」(1974)など。

エドガー・ヴァレーズ Edgard Varese
1883から1965年。フランス生まれ。のちにアメリカに帰化。打楽器を多用した作品を数多く発表した後、戦後は電子音楽を作曲した。「組織された音響」という概念は斬新な音響空間を生み出した。代表作に「アメリカ」(1920)「アンテグラル(積分)」(1925)「イオニザシオン(電離)」(1933)「デザール(砂漠)」(1954)など。

フィリップ・アゴスティーニ Philippe Agostini
1910年フランス生まれ。映画「舞踏会の手帖」(1937)「ブローニュの森の貴婦人たち」(1944)などの撮影を担当し、「カルメル会修道女の対話」(1960)などを監督した。

プロフィールは展覧会カタログ「世界遺産への歩み 20世紀モダニズム建築の巨匠 ル・コルビュジエ 光の遺産」(アーキメディア発行)より転載


ル・コルビュジエ光の遺産―20世紀モダニズム建築の巨匠 世界遺産への歩み

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: アーキメディア
  • 発売日: 2008/09
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