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水と光と空気さえあれば [美術/音楽/映画]

ボタニストにしてアーティスト、パトリック・ブラン Patrick Blancの記事を少し前にVOGUE NIPPONに書きました。



地上に建築を建てるということは、緑が茂る大地を、植物から奪うことである。そこで近代建築家たちは屋上庭園という方法で、植物から奪った大地を返してあげようと考えた。しかし、その努力も虚しく、都市から緑は失われていく。多くの建築家が今、植物学者で現代美術作家でもあるパトリック・ブランが手掛ける“垂直庭園”に注目するのは、私たちが暮らす都市には、緑が必要だと痛感しているからだ。建築家だけではない。インテリアデザイナーもファッションデザイナーも……。

「幼少より植物が好きで、母と森を散歩するとコケやシダに興味津々の子供でした。ある時、水族館の大きな水槽に植物が生い茂る様子を見て、土がなくても、水と光があれば植物が育つことに驚いたことが、今の私の制作活動につながっていると言えるでしょう」と子供時代を振り返るパトリック。その驚きを新たにしたのは、大学で自然科学を学んでいた時のこと。19歳で彼は初めて東南アジアの熱帯雨林を訪れ、滝の岩の裂け目に、露になった木の根の上に、土がなくても植物が元気に育っている光景を目の当たりにする。帰国後、パトリックは土を使わない植物の生育の研究に熱中し、それが今日の垂直庭園の技術の基礎となっているのだ。

「垂直庭園の構造はとてもシンプル。メタルのフレームを組んでPVCシートを取り付け、あとはフェルトだけ。植物はこのフェルトに根ざしていくわけです」。

彼が最初に垂直庭園を公開したのは、パリ19区外にある、ラ・ヴィレット公園のシテ科学産業博物館 Cité des Sciences et de l'Industrieの壁面。86年のことだ。

「この時は、なかなか良い出来映えだったのに、ほとんど注目されなかった。実際には78年に、自宅での垂直庭園の実験がマスコミで取り上げられたのが最初の公開ですね。私の仕事がメディアの関心を集めるようになったのは94年、ショーモン・シュル・ロワールで開催された国際庭園フェスティバルから。作品に最初に注目したのは現代美術の世界の人々でした。それから建築家やデザイナーが興味を持つようになりました。広く認知される今日まで30年の時間が必要だったわけです」

現在はショップ、ホテル、公共機関などから制作依頼が絶えない。そのパトリックの最新作は「表参道GYRE」エントランスに設けられた緑の壁だ。

「熱帯雨林は約30mの高さの中で、太陽光が豊富な上部と、光がほとんど届かない下層部分で、それぞれに適した植生を見ることができます。GYREの壁は、この熱帯雨林の高さを圧縮したものです。下にいくほど耐陰性の強い植物が植えられています」

彼の手描き図面には植物の細かい配置とその学名が書き込まれているという。現場に立つパトリックは、垂直庭園に育つ植物たちと対話しているように見える。
「植物は自由なもの。私はその植物や自然と、都市生活の中でアクセスできる意味を伝えたい」

2007年10月のパリコレではステラ・マッカートニー Stella Nina McCartneyのショーのために垂直庭園を制作し、緑のコラボレーションが話題になった。
「彼女から直接依頼があり実現したものです。ショーが終わっても植物を破棄しないことを条件に手掛けました。今は鉢に小分けにされて、次の出番までパリの養護学校に置かれています」

http://www.verticalgardenpatrickblanc.com/



Vertical Garden: In Nature and the City

Vertical Garden: In Nature and the City

  • 作者: Patrick Blanc
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: ハードカバー





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コメント 3

イソカヨ

お久しぶりです
垂直庭園凄いですね。

表参道GYREは行ったことありますが垂直庭園にまったく気がつきませんでした。改めて見に行こうと思います。
by イソカヨ (2008-03-21 14:54) 

ももか

ブログの更新、待っておりました!
一挙更新、お疲れさまです

そういえば、以前スキンケアの本を出したいとおっしゃっていたのを拝見して、ウキウキしながら待ってましたが、例の出版社がまさかの倒産(?)…で、もう話はなくなってしまったのでしょうか。

まだまだ楽しみに待ってます。ブログでもスキンケアの話もっと聞きたいです!
by ももか (2008-03-27 16:43) 

橋場一男

コメントありがとうございます。
って、3月にいただいていたコメントだったんですね。
放置したままで申し訳ないです。

GYREの垂直庭園はエントランスのところです。
なかなかキレイですよね。

スキンケアの本は今のところ予定はないのですが、資料だけはたくさん読んで勉強中です。
by 橋場一男 (2008-05-07 11:25) 

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