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ウェグナー [デザイン/建築]

週末に調べものがあって、久しぶりにリビングデザインセンターOZONEのライブラリーに出かける。3階プラザではハンス・ウェグナー Hans J. Wagnerの追悼展が開催されていて、カールハンセン Carl Hansen & sonで製造している椅子とテーブルが展示されていた。享年92歳。展示パネルには何名かの識者が追悼文を寄せていて、どうでもいいモノもあれば心に染みるモノもあった。ハンス・ウェグナーの家具でいちばん好きなデザインはどれかと聞かれると、ぼくは迷わずCH36とCH37を挙げる。PP501(通称ザ・チェア)とかCH24(通称Yチェア)とか、ウェグナーがデザインした有名な椅子はたくさんあるけど、個人的にはCH36こそ“The Chair”と呼びたいくらい、ホントに完璧なフォルムだと思う。というか元ネタのシェーカーの椅子が完璧なのかも。羽原肅郎さんが追悼文の中で、このCH36について書かれていたのを読んで嬉しかった。羽原さんはこのフォルムを見て“(乗り越えられない)壁”を感じたそうだ。CH37はアームチェアバージョン。PP501は確かに素晴らしい椅子だと思うが、いくら一生モノって言われても、あの金額ではちょっと手が出ないよね。

ぼくは以前、長い間ボーエ・モーエンセン Børge MogensenのJ39をダイニングで使っていた。この椅子の原形はCH36と同じシェイカーのダイニングチェアだ。高価なモノが多いデンマーク製の椅子の中で、J39は比較的安価な椅子で、CH36もウェグナーの椅子としてはかなり安いほう。でもJ39よりは少しだけ高い。フォルムの洗練度もウェグナーのほうが金額分くらい高いような気がする。色はナチュラルのソープフィニッシュが好み。いかにも北欧の椅子というベタな感じですが。

左がCH36で右がJ39。甲乙付けがたいが自分としては小差で前者の勝ち。

         


ハンス・ウェグナーの椅子100

ハンス・ウェグナーの椅子100

  • 作者: 織田 憲嗣, 丸山 彰一, 林 義夫
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 単行本



以前はCH36をスゴく欲しかったけど、最近は物欲がなくなって新しい椅子が欲しいと思わなくなった。近所の中古オフィス家具店でKnollのBastiano3シーターソファが8万円(もっと値切れそうな雰囲気)で投げ売りされてたのは、少しだけ気持ちが動いたけどね。これはトビア・スカルパ Tobia Scarpaのデザイン。数日前にYAHOOオークションで同じ革のバスチアーノが16万円で落札されていたが、たぶんコレだと思う。目ざとい人っているんだな。ぼくが最後に買った家具は椅子じゃなくて、仕事用に入手したジョージ・ネルソン George NelsonのNelson Home Desk。スワッグレッグと小股が切れ上がったシャープなシェイプが好みだった。

     

調べモノの帰りにKorresのシャンプーを買うため、久しぶりにザ・コンランショップ東京に立ち寄る。ついでに日焼止めも買おうと商品リストと棚を探したが見当たらない。お店のスタッフに尋ねると、Korresの日焼止めはないけど日焼後のクーリングジェルがお薦めですと言われたんだが、これって何か大きく間違っていないか。代わりにNEAL'S YARDのLAVENDER SUN SCREENを買ってみた。ちなみに薦められたのはKorresのヨーグルトクーリングジェルという新製品で、今ならボディバターが一本無料で付くそうだ。両方ともいらないけど。

この前、少しだけ書いた遊郭の話は卒業論文を書く時に調べたことで、20年以上前のことなのに意外に覚えているもんだな。遊女の手練手管にどんなものがあったかは「色道大鏡」という延宝年間に出版された奇書に詳しい。Amazonで調べると「色道大鏡」は昨年新版が出版されている。この本はすごく面白いので、さっそく買おうチェックすると定価が20790円とは……。著者の畠山(藤本)箕山は延宝の時代に諸国の遊里をフィールドワークした研究家だった。どんな時代にもこういう奇人っているんだな。ちなみに遊女の手練手管は、放爪、誓紙、断髪、入墨、切指、貫肉、で最後は心中だと思うけど、「色道大鏡」ではそこまでは書かれていない。痛みを通して相手に真実の愛を伝える場合が多いが、実際は指詰め用の小指も流通していたみたいだ。

此小指さては新粉かエゝ無念

という川柳もある。新粉とは新粉細工のことだと思う。
郭(くるわ)について書いた廣末保の「辺界の悪所」や前田愛(女優の前田愛じゃなくて元立教大学教授、故人)の著書もホントに面白い。江戸とは関係ないけど前田先生の「近代読者の成立」にはずいぶん影響を受けた。ぼくの恩師は松田修教授で、ゼミでは出来の悪い学生だったが先生の著書はかなり読んでいる。コレといってお薦めの本がないのが辛いところ。ぼくは近松の「男色大鑑」の読解をやっていたので、大学の同窓生にはずっと筋金入りのゲイだと思われていたみたいだ。まあ、改めて思い返すと、客観的にそう見られても仕方ないよな。残念ながらまったくのノーマルなんですけどね。

ぼくはウォルト・ディズニーは、郭の成り立ちやシステムを研究して「ディズニーランド」に応用したんじゃないかと思う。それくらい似ている。妄想だけど。

色道大鏡

色道大鏡

  • 作者: 藤本 箕山, 新版色道大鏡刊行会
  • 出版社/メーカー: 八木書店
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 単行本



近代読者の成立

近代読者の成立

  • 作者: 前田 愛
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 文庫


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nicco

ウェグナーの椅子でCH36と37が一番いい、というご意見に同感です。
私もずっとペーパーコードの椅子が欲しくて、YチェアかモーエンセンのJ39に注目していました。
でも、先日「ウェグナーに座ろう」という展示会で、CH37に座り、本当に驚きました。背中を支えるラインがYチェアよりもずっと柔らかかったのです。

同時にザ・チェアも座ってみましたが、ちょっと大統領じゃないとこの椅子は似合わないかなあと思いました。
ザ・チェアと比べてCH37は、気負いとかてらいとかがなく、
居心地の良さを感じさせる椅子ですよね。

一目で気に入り、オークのオイルフィニッシュを1脚購入しました。
Yチェアのほうが有名だし雑誌等でもよく見かけますが、
私もCH36と37のほうが素敵な椅子だと思います。
同じような方を見つけてうれしくて書き込みました。
by nicco (2007-11-20 22:31) 

hsba

niccoさん、コメントをありがとうございます。ウェグナーの椅子はどれも高価ですが、たぶんあの価格が椅子の本当の適正価格なんだと思います。Yチェアももちろん良い椅子だとは思いますが、やはり個人的にはCH36が好みですね。長く使うとますます愛着もわいてくるのではないでしょうか。
by hsba (2007-12-09 02:22) 

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