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アレグザンダー・ブレンナーの住宅建築/シュツットガルトの建築 [デザイン/建築]

ソリチュードがある丘を右側に、森の中を30分ほど下るとボトナングという小ぎれいな住宅街に出る。背後に控える深い森が暮らしの借景となり、山からの清流が家々の芝生の庭を縦断して流れる気持ちの良い高級住宅街だ。野鳥も多い。この辺りの土地は山から繋がっているためか起伏が激しく、敷地は高低差がかなりある。その特殊な土地形状を活かした住宅が多く、シュツットガルトの建築家アレグザンダー・ブレンナー Alexander Brennerが設計した住宅が何棟かあるので、散歩がてら見学に行った。現在のサッカーのドイツ代表監督クリンスマンの実家はこの近くにあって、ベッカライ(パン屋)を営んでいる。ここで焼くパンは美味しいので有名なのだが、住所が未だに分からず辿り着けていない。

下の写真はブレンナーの設計により2004年に竣工した新しい住宅。敷地はスキー場のような急斜面で、前面道路からは入り口まわりの門しか見えない。母屋はずっと下ったところにある。エントランスからは陸屋根と思われる庭と白い建物の上部だけが見える。その下にお屋敷があるに違いない。ブレンナーが外観に使う素材は、光の反射具合でテクスチュアが際立つものが多い。この大扉は完璧にマットな質感で、ベルベットのような不思議な手触りが眼でも感じられる。ここに使われている素材は、玄関の足ふきマットなどに使われる起毛した樹脂素材の不織布。そのまわりの外壁は黒い砂のような粒子の吹き付け仕上げだった。フォルムのバランス、目地のとり方、スリットの切り具合が絶妙だと思う。インテリアも見てみたいところだ。


そのすぐ近所に2棟並んだ連作住宅がある。写真上・中は2002年竣工。下は2000年に完成した住宅。平滑で人工的な仕上げに巨大な天然石を対峙させたり、玉砂利の使い方や竹の植栽など、とても日本的な感じがする。



ついでと言っては何だけど、シュツットガルト市街にあるドイツ表現主義の高層建築も紹介したい。1928年竣工の「Tagblatt-Turm」。設計はエルンスト・オットー・オスヴァルト Ernst Otto Ossswald。18階建ての建物はかつては街のシンボル的存在だったようだ。


Eberhardatrasse 61

シュツットガルトにはこの他にも素晴らしい建築がたくさんある。残念ながらほとんど紹介できないまま帰国の時期を迎えてしまった。例えば、国内外の建築家数名が集合住宅の開発にチャレンジした住宅展覧会Expo"Wohnen2000"跡地、ギュンター・ベーニッシュ Gunter Behnischが設計したLBBW銀行本店Haus der Dienstleistungen der Landesgirokasse、ウニヴェルシュタットUniversitätsの大学建築群、ハンス・シャロウン Hans Scharounの集合住宅、アドルフ・アベル、ロルフ・グットブロート Adorf Abel, Rolf Gutbrodが手掛けたリーダーハレ Kultur und Kongresszentrum Liederhalle……。

もしシュツットガルトに来て建築を見て回りたいと思ったら、建築ガイドブックか建築マップを入手することをお薦めする。どちらもドイツ語だけど少なくとも建物の情報と住所は分かるはずだ(上の建築ガイドは情報が少し古い)。

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コメント 2

@シン

ブレンナーいいですね。
中もどうなっているのか、
興味津々です。
by @シン (2005-12-26 21:51) 

hsba

この人の建てる住宅はオランダ、デ・スティルのJ.J.P.アウトの建築みたいです。キュビズムや構成主義のような雰囲気もある。フォルムで建築を捉えるのではなくて、何種類かの平板を立体的に組み合わせて形と内部空間をつくっていくという感じですね。平板が重なる部分に隙間を空けたり、コーナーを落としたり、全体的に建築が「軽く」見えるような工夫も凝らされている。形への理想というか理念が感じられます。頑固な人なのだと思います。中も見てみたいですね。日本ではほとんど無名の建築家ですが。もっともこのレベルの建築家は日本にはたくさんいるのかも知れません。
by hsba (2005-12-27 02:02) 

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